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二年目の春・8

「うわ~。」

「凄いですね。」

「うん!」

一方仮設店舗の方は夕方の前に外観は完成して、足場も撤去を終えることが出来ていた。

元々殺風景なプレハブの店舗が、本当に木の切り株のような外観に変わっている。

少女達とタマモは一から作るのを見ていただけに、その完成した姿に驚きと達成感を感じていた。

指導したのは横島であるし一番多く作ったのも横島だが、それでも外観の大半は少女達が作ったパーツなのだ。


「いや~。 頑張った甲斐があるよ。」

「本当だね。」

「貴女達! まだ中は終わってないんですわよ!」

ただこの段階で達成感を感じて、終わったような雰囲気になる少女達を、あやかは怒りの表情で注意する。


「分かってるって。 大丈夫、大丈夫。」

「ハルナさん。 貴女も何故そんなにのんびりとしてるんですか!」

「この程度の遅れは誤差の範囲内よ。 余裕。余裕。」

「ハルナは閉め切りに慣れてますから。」

尤も昨年と比べても仮設店舗の作業の遅れは深刻な程ではなく、ハルナなどはこの程度は閉め切り前の修羅場に比べたら余裕だと呑気に見えるほど楽にしていた。

実際去年はあまりの作業の遅れに一部予定していた内装の小物を諦めたりしたので、それに比べると遥かにマシである。


「あとは内装の設置か。」

現状ですでにテーブルと椅子の装飾の制作は終わっていて、残すは壁や椅子やテーブルの内装の設置のみだった。

みんな頑張ったおかげで、徹夜はなんとか回避出来そうな状況になる。


「そういや、絵本どうなった?」

「フフフ。もちろん間に合わせたわよ。明日には現物が届くわ!」

ちなみにタマモのアイデアを形にした店を絵本にすると意気込んでいたハルナは、本当に絵本を完成させて印刷してるらしい。

半ば独断なのでいつも彼女が作る同人誌を印刷をしてるところに、ギリギリ以上にギリギリになってから頼んだようだった。

まあ印刷をしたのも学園内の人達なので、突発的な仕事に慣れてるようであるが。


「夕映ちゃん。 本当に大丈夫か?」

「はい。 ハルナにしてはまともな出来です。 正直なところ私も意外でしたから」

確かに絵本と店のコラボは面白いのだが、作ったのがハルナというと流石の横島も少し不安になる。


「甘いわね。 真の作家たる者は、どんな本でも真剣に取り組む者よ。 これをきっかけに私は一気にプロになって……」

子供には見せられない同人誌を描いてるハルナに真の作家を語られてもと困惑する横島だが、タマモの思い出になるならいいかと深く考えないことにした。


「作者はタマちゃんで絵と監修がハルナなんです。ハルナその辺りちゃんとしてるから」

ちなみに横島はこの時初めて、タマモが同人絵本作家デビューすることを知らされていた。

てっきりハルナの作品だとばかり思っていたのだ。



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