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その三

後日ドラマ出演の交渉を行うために、再びテレビ局のプロデューサーが訪れていた

前回の感じから条件次第ではイケると判断したプロデューサーは、素人にしては破格の報酬を魔鈴に提示する


「条件の前にドラマの内容が知りたいのですが」

プロデューサーの予想に反して、魔鈴は契約書を見る前にドラマの内容を口にしていた


「内容ですか?」

「私達はあくまでもGSです。 フィクションのドラマとはいえ、内容次第ではお受け出来ません」

驚きの表情をするプロデューサーに、魔鈴はいつもに増して強気な表情で言い切る

素人がテレビドラマに口出しする事を、プロデューサーが良く思わないだろう事は魔鈴は百も承知だった

しかし魔鈴は自分と横島の社会に与える影響力を良く理解している

GSが正義の味方で霊や妖怪が悪であるような、わかりやすい勧善懲悪では困るのだ


この辺りは未来での踊るGSのテレビドラマから来る心配である

テレビドラマの踊るGSは、確実に勧善懲悪のわかりやすいドラマだったのだ

まあ映画版はいろいろあり、内容が違うのだが……


「とりあえず仮の台本はお持ちしましたが……」

プロデューサーは困惑気味に仮の台本を魔鈴に渡す

何故仮かといえば横島達の出演も決まってないため、まだ最後の数話の台本が決まってなかったのだ


プロデューサーは台本に目を通す魔鈴の顔を恐る恐る見つめている

まさか魔鈴がドラマに口出しするとは予想もしてなかったようだ


(やっぱり……)

台本に目を通す魔鈴の表情がどんどん険しくなっていく


「申し訳ありませんが、この内容ではお受け出来ません」

台本を置き静かに語る魔鈴に、プロデューサーの顔は真っ青になる

まさか条件以外で断られるとは、思わなかったようだ


「どっ……どこがマズいので!? 多少なら変更可能ですが!」

交渉するまでもなく断られたため、プロデューサーは慌てて顔色をうかがっていくが魔鈴の表情は変わらない


「まず、GSを良く理解されてない事です。 GSは決して正義の味方であってはならないのです」

魔鈴の言葉はプロデューサーにとって衝撃だった

プロデューサーもドラマを作る前にはGSに関して調べたし、それなりにオカルトに詳しい人をスタッフに加えてもいる

多少脚色してはいるが、根本を全否定されるとは思わなかった


「若い私のワガママと理解して頂いて構いません。 ですが私もプロのGSとして、譲れない一線があります」

魔鈴の強い言葉にプロデューサーは返す言葉がなかった

お金や条件ならばプロデューサーが本業だし、交渉も可能だったろう

しかし魔鈴がこだわるオカルトの部分については、プロデューサーは素人なため返す言葉もない


(やはり一流は違うな……)

魔鈴はプロデューサーが気を悪くするかもしれないと思っていたが、肝心のプロデューサーの反応は真逆だった

脚本家や俳優や原作者などその道の一流の人間と仕事をしてきたプロデューサーは、魔鈴のこだわりが気に入っていた

良く言えばこだわりで悪く言えばワガママなのは、どこの業界もよくある話である


プロデューサーには魔鈴の言葉の意味などわからないが、聞く価値のあるものだと判断していた


「詳しくお聞かせ下さい。 断るのはそれからでも遅くないはず……」

そして先程まで魔鈴に押されていたプロデューサーの表情が、いつの間にか真剣に変わっている


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