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その三

「そんじゃ、やるか?」

「いざ、尋常に勝負!」

かおりにより屋敷から解き放たれた鎧武者は、文化財の屋敷から離れた耕作放棄地にて雪之丞と勝負をすることになる。


「しまった!」

「何か問題でも!?」

雪之丞は魔装術で最初から全力で行くらしく、鎧武者もまたワクワクした様子だ。

しかし横島が突然真剣な表情で『しまった!』と叫ぶと雪之丞と鎧武者を含めた全員が横島を見てしまい、かおりは何か失敗でもしたのかと少し緊張感ある表情になる。


「せっかくだから観客呼べば、一儲け出来るんだが。」

「考え方が美神さんと一緒ですね。」

「……始めて結構ですわ。」

ただ横島が失敗したのはこんな面白そうな勝負を、このままやるのは勿体ないというだけであった。

おキヌはまるで令子のような発言に苦笑いを浮かべていて、かおりは呆れたように雪之丞達に勝負を始めさせる。


「全く。そんなことして観客に被害があればどうするんですか。」

「いや文珠で結界張ればいけると思いますし。 一人千円で百人集まったら十万っすよ!」

割と本気で後悔してる横島に、かおりは呆れていいのやら褒めていいのやら複雑らしい。

しかも令子と同じだというおキヌの言葉に、かおりは令子もそんな人なんだと思うと少しショックだった。

この数ヵ月で令子が金にがめついのは理解はしていたが、そこまでするかとは思うらしい。

まあお世話になっているし、悪い人ではないのは十分理解しているが。

ただ人間完璧な人なんて居ないんだなと、一つ勉強したかおりである。


「あの鎧武者凄いですノー。」

「クッソ。 女はダメだなんて差別だ。」

ちなみに鎧武者はかなり強く魔装術を使った雪之丞より強い程だったが、相手が強ければ強いほど喜ぶ戦闘民族の雪之丞と鎧武者は共に嬉しそうに戦っていた。

そんな二人に先程まともに戦えなかったタイガーは流石に自分は無理だと顔を青ざめさせていたが、魔理は意外にもまだ戦いたそうだ。

もしかすると戦闘民族の素質があるのかもしれない。


「雪之丞が居ると楽でいいな。」

「こういう依頼は、あの人ほど向く人は居ないかも知れませんわね。」

二人の戦いは続くが横島達は近くの自販機から買ったジュースを飲みながら、すっかり観戦モードに入って眺めている。

報酬は山分けの約束なので見てるだけでいい横島は上機嫌だが、意外にもかおりも楽でいいと同意していた。

まあ横島と違い鎧武者を文化財から引き離したので、ある意味依頼を達成したのはかおりなのだが。

正直、人に迷惑をかけないなら勝手に武者修行でも何でしてればいいとも思っていたりする。

ただ横島達はこのあと日が暮れるまで、決着が付かない勝負を見ていなけれならなくなることを知らない。

結局鎧武者は勝負が付かないからと後日改めて雪之丞と勝負をすることになり、横島達を呆れさせることになる。


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