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白き狼と白き狐と横島

「どうだった?」

一方、事務所に戻った京子を待っていたのは百合子だった

いち早く結果が知りたくて直接来たようである


「事前の情報なんてアテにならないわね~ ただの世間知らずなお坊ちゃまよ。 がっかりしちゃった」

まるで合コン相手が詰まらなかった時のような表情で軽く苦笑いを浮かべる京子に、百合子は静かに考え込む

西条に関しては横島から聞いた以外にも、百合子が調べた資料を事前に見ていただけに京子はもう少しやり手だと予想していたようだ


カチ……

京子がポケットから取り出したICレコーダーを再生すると、先程の京子と西条の会話が流れ始める

ムキになって声を荒げる西条の様子を百合子は注意深く聞いていく


「種はまいたわ。 後はオカルトGメンの英雄美神美智恵がどう動くか…… まあ油断は出来ないけど、多分和解で終わりね」

一仕事終えた京子はすっきりしたような表情である

本人も言うようにまだ油断は出来ないが、法廷闘争ではどう考えても西条や美智恵に勝ち目はないし戦うメリットがない

西条自身も頭が冷えるか状況が不利だと悟れば和解に動くだろうし、始めから裁判などなる可能性はほとんどないのだ


「そう…… じゃあ悪いけどこの後も頼むわね」

美智恵の関与を疑っていた百合子は、京子の言葉に少し複雑な表情を浮かべていた

西条がどんな人間かは事前に調べていた百合子だが、京子の言葉やICレコーダーの会話からその評価が急降下した事は言うまでもない


「ただ世間知らずなだけに、怖い相手ではあるわよね~ 自分は必ず正義だと思い込んでるんだから…… 私も仕事関係でGSの知り合いは居るけど、彼ほど傲慢な人はいないわよ」

「分不相応な権力を持った証拠でしょうね。 オカルトGメンの捜査官としての人気や名声を自分のモノだと勘違いしてるのよ」

今後の目処がたった二人は、西条の話題で盛り上がっていく

エリート気取りの公務員など星の数ほど居るが、二人にとっては西条も似たようなものだった


「居るのよね~ 優秀なのに人の上に立つとダメになる、典型的な中間管理職タイプな人」

「権力なんて麻薬みたいなモノだもの。 私は欲しいとは思わないわ」

西条の器の小ささを笑う京子に対し、百合子は権力の恐さを感じている


「相変わらずね、百合子は…… その気になれば女性で初めての日本経済界のトップも狙えたでしょうに」

権力が欲しくないと言う百合子に、京子は昔を懐かしむように微笑む

もしも百合子に権力欲があれば、どんな日本になっただろうかと思わず考えてしまう

一個人の力で世の中や世界が変わる事などないのは、もちろん京子も理解している

しかし、昔の百合子にはそれでも何か変わるような期待を抱かせるところがあった


「嫌よ。 私は普通でいいの。 馬鹿な亭主とダメな息子の面倒見てるくらいがちょうどいいのよ」

きっぱり嫌だと言う百合子に、京子は懐かしそうな笑みを浮かべる

もしかしたら、昔から似たような会話があったのかもしれない


この日西条の問題にメドが立った二人は、久しぶりに昔話に華を咲かせていた

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