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二年目の春・8

「ゲーデル! これはどういうことだ!」

「我々はお前が赤き翼の意思を継ぐと思えばこそ!」

一方魔法世界のメガロメセンブリアでは、クルト一派の崩壊が始まっていた。

詠春によるクルト否定の映像について、魔法世界の各陣営のメディアは裏取り取材として詠春本人に確認したところ、詠春はフリーのジャーナリストという人物の取材を受けたと認めて映像が自分の物だと認めてしまったのだ。

その上で先の映像と共に、全てが全魔法世界及び地球側の魔法協会にまで流れて伝わっている。

この映像に追い討ちをかけるように詠春とは二十年来の友人だと言われる悠久の風のエレーヌ・ルボーンは、詠春が神鳴流を名乗るクルトに迷惑をしていたことや、赤き翼の政治利用を快く思ってなかったとの内訳をメディアに暴露してしまった。

悠久の風は他にもクルトの一件で詠春の名誉や立場が悪くならないようにと、元老院にも働き掛けていて完全に援護した形になっている。

元老院に関しては今回の件は、クルトを詠春がとうとう見放したのだろうと見ていた。

赤き翼は確かに非常識な集団だが、国家の転覆など狙ってなく目的は同じであろうと、やり方や考え方がまるで違うのは長年対立してきた彼らがよく理解している。

元々元老院は今回の件は高畑とも切り離して考えていたので、赤き翼と詠春も切り離して考えざるを得ないと判断するしかなかった。

せっかく旧世界で大人しくしてる詠春を、わざわざ表舞台に舞い戻らせたいとは誰も考えてない。


「魔法世界の救済こそ、ナギと赤き翼の意思ですよ。 それに違いはありません。」

結果としてクルトには最後まで残されていた、詠春の後継者として赤き翼の意思を継ぐ者という錦の御旗を失っていた。

これによりクーデターに荷担しようとした者達は潮が引くように離れて行き、魔法公開を計画していたクルトの側近ですら動揺して激怒している。

正直なところ赤き翼としての看板が無ければ、クルトのやり方は誰も受け入れないほど過激で危険なのは身内の彼らが一番理解していた。

仮に事を成し遂げてもこのままでは自分達はテロリストのまま終わると感じた同志達で、それでも魔法世界の為にと揺るがぬ意思を見せた者は皆無だった。


「計画は全て中止だな。」

「証拠になりそうな物は全て破棄しろ!」

最早クルトの話を信じる気のない同志達は、クーデターと魔法公開の中止をクルトの意思を無視して決めると、証拠になりそうな物の破棄を急ぐことになる。

赤き翼と縁が切れたクルトなど価値はないと言わんばかりの彼らに、クルトは冷めた目で見つめ不気味な無言を貫いていた。


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