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その二

数日後、踊るGSの出演依頼の問題を話すために事務所には愛子達が訪れている

先日訪れたプロデューサの依頼内容は、基本的に横島・魔鈴・愛子・加奈・ピートの五人がセットで依頼が来ていたのだ


「うそ~! またテレビに出れるの!?」

「信じられない……」

愛子と加奈は驚いているが、どちらかと言えば喜びに近いように見える

偶然のエキストラがまさか二回目まであるとは、さすがに思わなかったようだ


「僕はあんまり気が進まないんですが……」

一方ピートの反応は真逆である

バンパイアハーフである事を背負っているピートなだけに、やはり目立つのは苦手なようだった


そんな愛子達に横島と魔鈴は、どうするべきか判断に迷っている

本来はこの時期はアシュタロス一派との戦いに向けた、準備に専念してるはずなのだ

しかし運命の悪戯によって要らぬ仕事が増えているのだから、全く笑えない話だった


「やっぱり、ピートは気が進まないか」

前回も気の進まないピートを、横島達が半ば無理に出演させたのだから当然の反応だろう


(ピートの理想には、GSより芸能人の方がいい気がするんだがな)

複雑そうなピートを見て、横島はふと未来を思い出していた

吸血鬼と人間の共存を理想に掲げているピートには、GSで戦うよりも芸能人の方が遥かにいいと横島は思う

多くの人に吸血鬼を理解してもらうには、GSよりも芸能人の方が向いてると思うのだ


(まあ、ピートの700年を俺が勝手に判断するのはまずいか……)

いろいろ考える横島だが、700年生きたピートには横島には分からない過去や思いがあるのは理解している

結局横島は、今までと同じように接していくしか出来なかった


「では、今回はピートさん抜きと言うことでよろしいですか?」

その後も愛子達といろいろ話した結果、ピートは今回は出演をしない事になる

前回の踊るGS出演後の反響が予想以上に大きかったために、さすがに嫌になったようだった


「すいません。 せっかく頂いた話ですが、これ以上有名になるのはちょっと……」

「いえ、構いませんよ。 元々は忠夫さんが失敗したのが悪いんですから」

申し訳なさそうに謝るピートに、魔鈴は笑顔で答える

元々は横島が人混みの中で正体をバラしたのが悪いのだ

ピートの性格を理解してる魔鈴は、これ以上ピートのストレスになりそうな事を無理に参加させるつもりは無かった

基本的にセットで依頼が来てるとはいえ、テレビ局も個々の都合は理解してくれるだろう


そして最終的に横島と魔鈴の二人は、今回は銀一の未来の為に出演する事に決めていた

歴史も些細な事は比較的簡単に変わってしまうのは、前回のフェンリル事件で痛いほど理解している


もし万が一このドラマが失敗すれば、銀一の未来が変わってしまうかもしれない

仮に横島が第一話に出演しなければ、未来と同じ道を辿る可能性が高いために出演しなかっただろうが

横島達の出演により、すでに未来とは違う道を歩んでしまった

こうなってしまった以上はドラマの成功に最大限協力した方がいいだろうと、横島と魔鈴は判断していたのだ


この辺りの歴史に対する影響力は未知数だが、横島と魔鈴の人気が銀一にプラスに働いた事は確かであり、未来と違う以上最善と信じる行動を取るしか無かったのである


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