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その二

同じ頃、令子はイギリスから取り寄せた魔鈴に関する資料に目を通していた

フェンリル事件がよほど納得いかないらしく、魔鈴が大学時代に発表した論文などを取り寄せていたのだ


(たいした事書いてないわね)

論文に目を通す令子だが、内容にはつまらなそうな表情になる

中世ヨーロッパでのオカルト技術の考察や魔道士・魔女の歴史など、今は失われた当時の事を僅かな資料から推測も加えて纏めた論文としては素晴らしい物ではあるが、令子が知りたい事は何も書いて無い

他にもイギリスでのGSとしての活動実態も調べていたが、こちらも魔法技術の研究目的の除霊などしかなく目立った実績はまるで無かった


「良く見るとおかしいのよね~ イギリス時代は白魔法専門の研究だったのに、いつ他の魔法を研究したのかしら?」

イギリス時代魔鈴が発表したのは、いくつかの中世の白魔法を復元した事のみである

魔法のほうきの作成や使い魔に関する魔法が中心で、詳しい技術や研究結果はほとんど公表してないのだ


まあ発表しない理由は令子も理解している

ヨーロッパでは科学が発達した現代でもカトリックの影響が非常に強い

特にオカルト関係は今もカトリックが全盛だろう

かつて唐巣が異教の魔物を退治する為に仕方なく異教の儀式をしてカトリックを破門されているように、カトリックの教えから逸脱する中世の魔法に関しては現代でも風当たりが強いのだ

中世の技術だけを欲する者は今も昔も多いが、日本人である魔鈴以外には研究者すらほとんど居ない理由はそこにある

誰もカトリックに喧嘩を売るような事には関わらなかったのだ

最も魔鈴はそのような理由の他に自分の復元した技術の悪用を防ぐ為にも公表しなかったのだが、令子はその点には気が付かなかったようである


「それにカオスが使った大量の精霊石も気になるのよね。 あれだけの量の精霊石を集めるのは不可能だわ。 あいつらいったいどうやって……」

一つ疑問が浮かぶと次々と疑問は増えてゆく

オカルトGメンじゃあるまいし、一個人が精霊石でミサイルを作るなど有り得ない

仮に令子くらいの資金力があれば可能ではあるが、使えば破産するのは明らかだった


「西条さんも、もっと詳しい資料集められなかったのかしら?」

イギリスにコネなど無い令子は、どうやら魔鈴の資料を西条に頼んで集めたようである

実際あまり期待はしてなかったのだが以前に聞いた話以上の事実は無く、令子は少しイラつきながら資料をデスクに放り投げた


「なんか気に入らないのよね~」

実際魔鈴と横島が何を隠してようが関係無いのは、令子自身もわかっている

しかし何故か納得がいかないのだ


「横島の秘密なんて、すぐに全てを明らかにしてみせるわよ。 私は美神令子なんだから!!」

結局令子は、良くも悪くも横島が気になって仕方ないようだった

それが何を意味するのか理解しないままに……


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