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白き狼と白き狐と横島

「勝算はあるの?」

あまりに馬鹿げた争いを始めようとする西条に、美智恵は怒りを通り越して飽きれ気味である

基本的に裁判は証明された真実から一定の結果を導くものであって、それ以上でも以下でもない

西条の言葉と態度から何かしらの勝算があると感じた美智恵は、その内容を尋ねていた


「横島君の訴えには証拠がありません。 逮捕やら人類の裏切り者やら世間を騒がせた彼の言い分を誰が信じるでしょうか? 逆にホテル襲撃や名誉棄損と彼のセクハラなどを訴えてやります」

見下していた横島が弁護士に都合のいい事を好き勝手言って訴えると脅してきた事実に、西条はかなり怒りを感じてるようである


「まさか令子達を巻き込むつもりじゃないでしょうね? 令子やおキヌちゃんは横島君との訴訟に関わらないと思うわよ」

無罪を勝ち取るばかりか逆に横島を訴えると言い出した西条に、美智恵は冷たく突き放した言い方をしていた


(馬鹿ね…… 横島君は令子の秘密を知りすぎているのよ。 令子に直接牙を向いて来た訳でもないのに、横島君を訴える訳ないでしょうに)

横島を訴えるのも西条が無罪になるのにも、当時の関係者の証言が必要不可欠である

しかし当時一番身近だった令子やおキヌは、横島を訴えるのに参加するはずがないのだ

令子にとっては自分の秘密を知りすぎている横島を訴えるメリットがないし、令子やおキヌは心の奥底では今でも横島への割り切れぬ想いを抱えている

そんな二人が横島と今法廷闘争などするはずがない


「えっ……」

令子やおキヌが関わらないと言う言葉に、西条の思考は止まってしまう

二人の気持ちまで考えてなかったようだ


「当時の関係者のほとんどは横島君に近い人物よ。 誰が西条君の証人になってくれるの? それに警視庁は多分貴方を庇わないわよ」

驚き思考が止まった西条に、美智恵は畳み掛けるように問題点を挙げていく

西条の考えは基本的には間違ってはいないのだが、重要な点がいくつか間違っている

一つは横島と西条の人望の違いを全く理解してない

横島を認めない西条は横島の人望を否定しているし、逆に自分に人望がない事も理解してないのだ


そして二つ目はオカルトGメンの現状を理解してない

世間一般には信頼度や人気があるオカルトGメンだが、オカルト業界や政府関係にはあまり信頼度がないのだ

ザンス国王襲撃事件に関しても、責任問題になる場合は西条は切り捨てられるだろう

横島の逮捕や西条の逮捕などの対応は西条にも問題はあったが、警視庁にも問題があったのだ

しかし政府や警視庁と関係が良くないオカルトGメンでは、切り捨てられるのがみえみえだった



「西条君。 人生を賭けて横島君と戦う覚悟がないなら、頭を下げてでも和解しなさい。 貴方は知らないだろうけど、小竜姫様が横島君を争い事に巻き込まないようにGS協会に圧力をかけてるわ。 訴えれば裁判の結果に問わず、今後日本のオカルト業界で貴方に協力するGSはいなくなるわよ」

状況分析や読みの甘さもあるが、美智恵には西条が人生を賭けてでも横島と戦う覚悟があるようには見えない

中途半端なプライドで法廷闘争をするなど、あまりに馬鹿げていると美智恵は思う


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