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二年目の春・7

この日の夕食には古菲と豪徳寺達が来ていた。

特に用があった訳ではないが、修行帰りにちょっと小腹が空いたので寄ったのだろう。


「相変わらず高畑先生には手も足も出ないアル。 どうすればいいかさっぱりネ」

「へ~。 頑張ってるわね。」

高畑に師事して以降は明確な目標と指導を受けている古菲達であるが、それほど一朝一夕で実力は上がらない。

ただ少女達は悩む古菲達を見て、やっぱり高畑も強いんだなと再認識していたが。

もちろん弱いとは思ってないが、横島とエヴァに手も足も出ない姿ばかり見ているので今一つ実感はなかった。


「私達は魔法の練習くらいしかやってないもんね。」

「護身術くらいなら教えてもいいんだが時間がないからな。」

一方の少女達は本当に時間がない日々で、麻帆良祭が近くなると更に魔法の練習時間が減っている。

結局何を減らすかと言えば、あまり日常に役に立たない魔法の練習が減っていたのだ。


「本当にどうすればいいのか……。」

「格闘技と力の使い方って実は別なんっすよ。格闘技は肉体の使い方で、力の使い方は形にないモノの使い方ですから」

能天気な格闘バカの古菲はともかく豪徳寺達は少し自信を失い悩み始めてるようで、そんな珍しい彼らに横島はついつい口を出してしまう。


「形にないモノか。」

「全く別物って訳でもないですけど。 ちょっと乱暴な言い方をすると、なまじ頭で考えると難しくなるかも。」

ちょうど今日はまだ刀子も高畑も居なく、横島は何となく悩める豪徳寺達に少し昔を思い出すのか、簡単なアドバイスをしてしまう。

横島自身は意外に出来てしまったので苦労はなかったが、一般的な人の苦労もそれなりに理解はしていた。


「固定観念とか中途半端なイメージを、まず捨てた方がいいっすね。 気も魔力も霊力も根源は命の力っすよ。 あとはそれをどう使うかにより違うだけですから。 逆らわないことです。 大いなる流れとか人の潜在的な意識に。」

「ありがとう! 参考になったよ。 少しやってみよう!」

言うだけならまあ問題ないだろうと少し語った横島の話に、少なくともやる気だけは取り戻した豪徳寺達は、古菲と共に更なる修行がしたいと食事を終えると嬉々として帰っていく。


「珍しいですね。 先輩達にアドバイスするなんて。」

「まあ、たまにはな。 迷う者に道を示すくらいなら構わんだろ。 誰だって悩む時はあるしな。」

少女達は横島が豪徳寺達にアドバイスしたことに驚くが、横島自身あまりバトルジャンキーは好きではないが、嫌いというほどでもない。

横島もまた高校生の頃をふと思い出すと、いろんな人に助けられて来たのだ。

少し昔を思い出して余計なお節介をしたくなる時もある。

まあそれが横島の意思なのか、受け継いだ魂の意思に影響されたのかは定かではないが。


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