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二年目の春・7

「相変わらず汚ない店ね。」

「いいじゃん。 雨宿りするだけなんだから。」

結局この日は雨が降ったり止んだりしながら放課後になっていた。

雨宿りのためか日頃より混雑してる店に入って来た聖ウルスラの制服を着た三人組は、あからさまに見下したような表情と言葉を隠すことなく口にした。

店内の常連の女子中高生は、彼女達の姿に眉を潜める者も何人か居る。

彼女達の中心人物は英子という聖ウルスラの三年で、史実においてまき絵や亜子を怪我させたり、明日菜やあやかに因縁を付けていたドッジボール部員の三人組だった。

プライドが高く他者を見下して嫌がらせしたりする彼女は、聖ウルスラの厄介な人として有名である。


「いらっしゃいませ。 ご注文は?」

「要らないわ。 ここ注文しなくてもいいんでしょ?」

どうやら先程まで弱かった雨が急にどしゃ降りになり雨宿りに来たらしい彼女達は、勝手に空いてる場所に座ると注文を聞きに行った明日菜を鼻で笑い、何も頼まないという態度に明日菜は唖然とする。

確かに横島は何も頼まない人でも雨宿りや休憩にと受け入れてはいるが、相手は顔見知りの常連ばかりであるしここまで態度が悪い人も珍しい。


「アスナ。こっち注文お願い。」

「あっ、はい。」

「あの人達に関わったらダメだから。 放っておきなさい。」

あまりの態度に明日菜は怒ることも忘れてポカーンとしてしまうが、そんな明日菜を見かねた常連の女子高生達により明日菜は彼女達から引き離していた。


「えーと、でも。」

「とにかく面倒な人達なのよ。 先生への態度だけはいいから問題にされてないけど。 気に入らない後輩とか虐めてるしさ。」

「気に入らないと粘着して嫌がらせとかもするしさ。 放っておけばすぐに居なくなるから。」

「……はい。 そうですね。 ありがとうございます。」

明日菜とすればあまりに失礼な態度に段々怒りを感じ始めていたが、そこですぐに怒らなくなったのは彼女の成長だろう。

常連の女子高生達も明日菜が新聞配達などしながら頑張ってるのを知るが故に、ちょっと不満げな明日菜を宥めて関わるなと言い聞かせていく。


「ふーん。潰すか?」

「そこまでしなくて、いいですから。」

事情はすぐに明日菜から木乃香達や横島にも知らされ、横島は汚い店だと言われたことにカチンと来たのかさらっと潰すという言葉を口にするも明日菜や木乃香に止められる。

横島は確かに基本的には女好きで女には甘いが、かつて自分を散々バカにして鼻で笑った女達のことは忘れてないし、人類の敵にされた時にされたことも忘れてない。

普段は木乃香達のおかげで表面には出ないが、横島には根強い人間不振が今もあった。

それでも馬鹿にされたのが自分自身なら笑って受け流すのだろうが、坂本夫妻が守り抜き木乃香達と頑張って作り上げた店を汚いと馬鹿にされたのは許せなかった。

ただ明日菜や木乃香は、横島が珍しく危険なことを口にしたのでビックリして止めている。

まさか闇討ちなんてしないだろうが、正直やり過ぎるような気がしたのは気のせいではないかもしれない。

横島という男は自分自身のことならば我慢するが、周りの大切なモノのことになると怒ることがあるのは今も変わってなかった。

結局英子達は誰も関わらぬまま雨が小降りになると礼も言わずに帰って行き、横島が出入り禁止にすると怒るのを木乃香達や常連が宥めることになる。


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