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二年目の春・7

「またあめだ」

六月は梅雨の季節となる。

雨が降ると大好きなお散歩に行けないタマモは、この日も朝から降り続く雨に少しばかり面白く無さげだった。


「今降らんと夏に水が足りなくなるからなぁ」

横島はそんなタマモを抱き抱えてやると宥めるように言葉をかけるも、タマモにとってそれとこの雨が何故繋がるのか今一つ理解できない。

不満だと言いたげにぶらぶらと足を揺らすタマモに横島は苦笑いを浮かべるが、流石に自然の雨を止める訳にもいかない。


「ジジイどもの相手も飽きたしな。 タマモ。 相手をしろ」

「うん!」

店内を抱き抱えながら歩き宥める横島の姿に、平日の日中ということもあり常連の年配者達が微笑ましげに見ていた。

ただそこでちょうど懲りずに勝負を挑んで来た年配者を打ち負かしたアナスタシアが、タマモにリバーシブルでの勝負を挑むとタマモは途端に笑顔になる。

横島はタマモを下ろすと嬉しそうにアナスタシアの元に駆けていく姿を見送り、再び雨が降り続く空を窓越しに眺め始めた。

雨は嫌いだと語り雨が降るたびに仕事をしなくなる、かつての上司を少しだけ懐かしく思い出しながら。



「そうですか。 割れましたか。」

「完全に決別した訳ではないようじゃがの。 どう思う?」

「詠春さんに聞いていただければ分かりますが、彼はその前までのアーヴェルンクスと少し違うとは昔から感じてます。 具体的にどうかと聞かれても困りますが。」

「現状ではそう出来ることはないはずなんじゃがの。 奴にメガロメセンブリアへ行かれると困る。」

一方近右衛門はフェイトがメガロメセンブリアの件に介入するかも知れないと知らされて、急遽高畑に相談していた。

デュナミスと別れたフェイトは連合の支配領域の辺境に行き、独自に情報を集めだしていて介入する気配がある。


「これを知ってるのは我々だけですよね。」

「うむ。」

「妨害するしかないのでは? アーヴェルンクスの怪情報を偽情報と混ぜて間接的に流すとか。」

「出来れば触れたくないのじゃがの。 追い詰めたくはない。 窮鼠猫を噛むとは少し違うが、あれが本気になれば厄介なことになる。」

「確かに追い詰めたくはないですね。」

「嫌な時に嫌な連中が動くわい。 こちらは動けんと言うのに。」

これに関して近右衛門は対応を決めあぐねていた。

土偶羅からは当面様子見しかないと言われているが、下手をすれば収拾がつかなくなる事態に発展する可能性もあり予断は許さない。

正直フェイトとデュナミスを泳がせてるのは、それがメガロメセンブリア元老院にとって望まぬことだからである。

しかし近右衛門はメガロメセンブリアの崩壊までは望んでない。

今メガロメセンブリアが崩壊すればとばっちりが地球側にも来る可能性があり、下手すると魔法協会の独立性が奪われ兼ねないのだ。

仮に今フェイトがメガロメセンブリアで暴れても、高畑は行かせられない。

近右衛門や悠久の風が必死に高畑を守ろうとしている努力が無駄になるのは明らかなのだ。

かといって横島やエヴァを出すのは例え正体を隠しても悪手であり、対応に窮するとしか言えなかった。

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