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白き狼と白き狐と横島

「何か勘違いをされてませんか? 私はテロ事件の真相を暴こうとするマスコミではありませんよ」

ニッコリと微笑んで語る京子に、西条は思わず力が抜けそうになる

表情や態度と言葉があまりにも正反対の京子に少し戸惑っているようだ


「問題は西条さん、貴方と横島氏の個人的な問題です。 横島氏は以前に貴方に銃で撃たれたと話してます。 まあ私としてはこちらも問題視してまして、誤認逮捕と合わせると十分告訴するに値すると考えてます」

西条が僅かに戸惑ってる間に、京子は淡々と自らの主張を語っていく

ちなみに西条の銃器に関してはオカルトGメンの明確な規定があり、心霊対象に限定した使用の元に許可されている物である

それは神通棍や霊体ボーガンと同じ扱いであり威嚇でさえも人に向けてはダメだし、オカルトが絡まない事件に関しては捜査権も銃の使用権も全くない

本来は冗談でも人に向けていい物ではないのだ


「ちょっと待ってくれ! 横島君は随分勝手な事ばかり言ってるな。 元々は横島君が僕の滞在していたホテルに襲撃して来た事が原因なんだぞ!!」

あまりに横島に都合がいい事ばかり語る京子に、西条は声を荒げて横島の非を訴える

この時西条は横島の勝手な言い分に頭に血が上っていた

本来ならそんな事を京子に言っても意味がない事は理解しているし、西条の言い方では銃器の発砲を暗に認める意味にも成り兼ねないのだ


「では法廷で争うのですね? オカルトGメンの真実を世間に知らせるいい機会ですね」

再び穏やかな笑顔を見せた京子は、あまりにも感情的にな西条の言葉に内心呆れていた


(これで本当にエリートなの? ただの馬鹿じゃない。 なんでそんなに忠夫君を目の敵にするのかしら)

テレビや新聞で見たオカルトGメンの捜査官としての西条のイメージとはあまりに掛け離れた姿に、京子は軽く幻滅している

誰でも好き嫌いはあるし人である以上感情があるのは仕方ないが、弁護士として堂々と来た京子にこんなに感情を露にするのは弱点を付け込んでほしいと言ってるような物だった


「どれもこれも確かな証拠がない。 横島君の妄想に付き合う必要はないですね」

怒りで熱くなってる西条だが、頭では裁判になった時の事を考えている

元々オカルトGメンでは訴訟関係への対応のために顧問弁護士が複数いるのだ

世間的立場のある自分の言い分と、逮捕やら人類の裏切り者やらお騒がせな横島では世論や裁判官がどちらを信じるか密かに計算していた


「そうですか。 では今日は失礼します」

最後まで表情を変えない京子はニコニコとした様子で帰って行く



一方西条は、今回の件をオカルトGメンの問題として扱う為にさっそく美智恵に報告していた


「…………」

突然横島と裁判沙汰になったと言い出した西条に、さすがの美智恵も言葉がでなかった


(何故西条君は横島君が絡むとこんなに馬鹿げた行動をするの? 横島君の犯罪行為と貴方の犯罪行為は別問題なのよ。 それを表沙汰にしてどうなるか何故考えつかないの?)

裁判という公開された場所で横島が全てを語ればどうなるか、美智恵はやはり気付いていたようである


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