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二年目の春・7

「何処まで凝った物にするか難しいな。」

結局この日はメルヘンな椅子やテーブルが有力なまま話し合いが終わった。

横島はタマモやいつものメンバーと帰路に着いていたが、壁や建物の外壁と違いお客さんが触れる椅子とテーブルなだけに作るのが難しいかもと少し危惧していた。


「そう? 大丈夫じゃない?」

「乱暴に扱ったりとかしても、壊れないようにはしないといけないでしょうね。」

去年は椅子とテーブルは組み立てるだけの物だったので良かったが、それでも騒いだり乱暴に扱ったりして一部傷付いた物は出たりしている。

楽観視する少女も居るが夕映なんかは横島と同様に心配していて、世の中にはクレーマーのような人も居るので慎重になっていた。


「そんなに難しく考えなくても、椅子に布のカバーとかでも十分だと思うよ。 クッション用のスポンジとか入れると座り心地良くなるし。」

「なるほど。」

ただこの件に賛成した夏美はそこまで凝った作りにするつもりはなく、あるものを利用しつつ壁や床に少しそれらしいセットを設置すれば十分だと考えていた。

正直去年が去年なだけにみんなプレッシャーや考え過ぎてる面はあるが、現実的に考えるとそこまで経費も掛けられないし出来ることは限られている。


「立体映像と料理だけで人は呼べるのよね。 実際。」

相変わらず良くも悪くも迷走気味のクラスだったが、二年目ということでプレッシャーばかりではなく有利な面も多々あった。

まずは横島や木乃香の知名度が昨年とは違うことも、二年目の今年は有利なところになる。

麻帆良だとご当地スターとまでは言わないが有名になると地元のケーブルテレビに出たり、学園のサークルの映画やイベントに引っ張りだこになる者も多いが横島と木乃香はその手の露出が少ないにも関わらず知名度は抜群だった。

開発中の最先端技術の立体映像も工学部や幾つかのサークルでは使用しているが、超鈴音自ら参加することでクオリティは決して負けてない。

まあ今年は横島が目立ちすぎて中学生の出し物じゃなく横島の屋台じゃないのかとも影では言われてるが、客観的に見て横島が名を上げる原因になった少女達の出し物に今年も協力することには好意的な意見もまた多い。

ここで露骨に金稼ぎの行動に出れば、それはまたそれで批判する者が多いのが人間という生き物なのだ。

特に大学生なんかから見ると横島の行動は義理堅くも見えるので、少し誤解なのだが勝手に評価もされている。

横島本人はタマモが楽しみにしてるからとしか考えてないが。


「おみせつくるのたのしみ!」

「アハハ。タマちゃん頼りにしてるわよ。」

「まかせて!」

理想と現実に二年目の挑戦という意味で昨年とは違う苦労がある少女達だが、誰よりもこの時を待ち望んでいたタマモの笑顔を見るとこうしてみんなで考えるのも楽しく感じる横島と少女達であった。


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