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白き狼と白き狐と横島

「西条輝彦さん、横島忠夫氏は貴方への法的措置を含めた幅広い形での過去の清算を検討しております」

「なっ!? 僕が何をしたって言うんだ!!」

突然語られたその言葉に、西条は取り乱した様子で憤りを露にする

普段は常に冷静な西条だが、やはり横島の問題はムキになるようだった


「まず一番の問題は、ザンス国王襲撃事件の時の誤認逮捕についてです。 未成年の横島氏の裏付けのない逮捕と勝手な氏名公表は全て貴方の判断だと警視庁側からも証言が取れてます。 これについては職権乱用罪と名誉棄損で刑事民事双方での告訴を考えております」

「なんだって……」

一年以上前のザンス国王襲撃事件での告訴をなど、西条はまるで予想してなかった

あの事件に関しては横島の次に逮捕された西条も被害者意識が強く、まさか告訴される事態になるとは夢にも思わなかったらしい


「あれはテロリストによる工作だったと決着が付いたはずだが…… 横島君だって納得していただろう?」

「貴方個人及びオカルトGメンとは、正式な謝罪と和解はされてないはずですが? ザンス王国からは勲章と共に正式な謝罪がありましたが、オカルトGメンと和解した確かな証拠はあるのですか?」

戸惑いながらも反論する西条に、京子は柔らかい笑顔のままキツイ言葉を並べていく

そんな京子のギャップに戸惑いを隠せない西条だが、京子の言う事はある意味西条にとって盲点だった


(馬鹿な…… あの事件を表沙汰にすれば内閣が吹っ飛ぶだけじゃ済まないし、キャラット王女の暴走も明らかになって外交問題にもなるぞ)

京子がどこまで真相を知っているかわからない西条は、困惑したまま対応を考えていく


ザンス国王襲撃事件に関しては、様々な力関係が働いた事件だったのだ

ザンス王国王女キャラットの暴走による犯罪行為もその一つであり、それらを隠蔽したのは他ならぬ日本政府である

小国であるザンスだが精霊石の埋蔵量は世界一で、精霊石に頼った霊能アイテムが全盛の現代オカルト界では他に類を見ないほどの力を持つ

当然日本も精霊石は必要だし、世界には宗教やオカルトと政治が繋がる国も少なくない

日本としてはザンス王国との良好な関係は、何が何でも死守する必要があったのだ


まあキャラット王女の暴走は、日本の警備体制の不備や捜査ミスなどもあり痛み分けという形になっている

キャラット王女の違法行為を隠蔽する代わりに、日本の責任に関しても追求しないという外交取引が行われていた


そしてこの事件は悪い事ばかりではなく、事件を境に日本とザンス国王は緊密に相互協力する関係になっている

日本としては精霊石を優先的に購入する権利を獲得しており、ザンスは近年増えている他国の精霊石に対抗する為の莫大な経済援助を獲得していた

そんな現状で今更ザンス国王襲撃事件を蒸し返すなどすれば、どこまで問題が広がるか西条にもわからない


「あの事件がどれだけデリケートな問題か、貴女は知らないようだ。 横島君が何をしたいのか知らないが、もう少し調べた方がよろしいのではないですか?」

自分は横島に訴えられる覚えはないと言いたげな西条は、京子に事件の真相に迫るように伝える

事件の裏側にある国家同士の思惑や利害関係を知れば、つまらない理由で告訴など言い出さないとでも考えてるようだ


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