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その二

その頃魔鈴は、事務所で仕事をしながら今後の対応に悩んでいた


(アシュタロス関連の事件や六道家への対応もありますし、あまり長く居つかれてはこの先の行動に支障がありますね)

難題が複数ある現状では、正直百合子ばかりを相手にしてられない

今後の事件への対策や六道家を始め横島と魔鈴に近づく連中への対応など、魔鈴のやる事は山積みだった

百合子が魔鈴に興味を持ち観察してる現状では、魔鈴が自由に動けなくて今後に支障が出る可能性もある

歴史が変わりゆく中、今の横島と魔鈴には未来の歴史にとらわれない柔軟な対応が必要だった


(いっそ、全てを話して協力してもらえば……)

魔鈴はそこで首を振り考えを止める

一般人の百合子に未来から時間移動して来たなどと、信じて貰える確証がない

それに未来のように信頼関係があればいいのだが、現状では百合子が真実を知ってどうするかわからないのだ


(仮に真実を話すにしても、その前提として信頼関係を築く事が必須条件ですからね)

百合子の能力や行動力は魔鈴にとって喉から手が出るほど欲しい事は確かであるが、かと言って勝手に行動するのでは困るのだ

歴史をこれ以上不必要に変えないためにも、百合子の協力を得る為には魔鈴が百合子に認められ信頼された後でなくてはならない

結局その能力の高さゆえに、魔鈴は百合子への対応の難しさを痛感している



同じ頃、横島は授業を聞きながらも一息ついていた

別に嫌いと言う訳ではないのだが、百合子が居ると息が詰まると言うか気持ちが休まらない

過去の自分よりは変わったとはいえ、百合子の価値観が横島と合わないのは今も変わらないのだ


(おふくろの価値観の立派な人間ってやつは好きじゃないんだよな……)

人間社会と言う枠の中で生きる百合子と人間社会の枠から外れる横島では、根本的な価値観が違い過ぎていた

特に横島の根底には人間に対する根強い不信感がある

それは二度目の高校生活を一緒に過ごすクラスメートに対しても同じであった

未来での扱いが今だに忘れられない横島は、本当の意味でクラスメートと打ち解ける事が出来ないでいる

愛子やピートやタイガーなどの親しい仲間達を別にすれば、横島とクラスメートの関係は未来と同じで遠い存在だった

まあ横島も未来よりは人間的に成長してるので、一見すると普通のクラスメートと変わらない態度なのだが

自身の認識としてはクラスメートの存在は未来とは変わらないままだった


この時代に来て以来予想外の出来事で人気が出た横島だが、実はその事がかえって横島の人間不信を蘇らせる原因の一つにもなっている

苦い思い出の多い高校生活が、全く正反対になったのだ

まあ横島の行動が変わったのが原因ではあるのだが、未来と現在の扱いが真逆なクラスメートに横島は人知れず不信感を募らせていた


(俺はおふくろが望むような人間にはなれねえよ)

勉強をするクラスメートの姿をチラリと見た横島は、心の何処かで身勝手過ぎる人間に成りたくないと反発しているようであった


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