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二年目の春・7

「そっちはどうだい。 セドリック。」

一方急遽メガロメセンブリアに戻っていた悠久の風のエレーヌ・ルボーンと腹心のセドリックは、秘密は今のところ漏らさず慎重に人を使いながら密かに高畑がもたらした情報の裏取りと調査を続けていた。


「だめです。 情報部はゲーデル議員のクーデターまでは掴んでますがどうも元老院がそれを口実にゲーデル議員の息の根を止めようと企んでるらしく泳がしてるだけです。 強制認識魔法の件は気付いてません。」

「情報源の方も情報通りだったよ。 本人は強制認識魔法の改良が元老院が行ってる極秘計画だと聞かされていたみたいでね。 違うと教えたら国家反逆罪かもしれないと理解して助けて欲しいと泣きつかれた。」

ただ現状は良くない。

メガロメセンブリア情報部はクルトのクーデターは掴んでいて元老院上層部も報告を受けていたが、元老院ではろくなことをしないクルトを合法的に潰すチャンスだと見て泳がせていた。

多少の犠牲や混乱は出てもそれで勝手なことばかりするクルトと、いつまでも人々が心の拠り所にしている赤き翼の名声を地に落とせるかもしれないとなると事前に阻止などするはずもなかった。

しかしそれすらクルトは読みきっていて自身の地位と名声を生け贄に地球に魔法をばらして、同時に二十年前の真相やメガロメセンブリアの暗部を明らかにしてメガロメセンブリア打倒と魔法世界の人間達を地球に移住させようと言うのだからエレーヌとセドリックはため息しか出ない。


「どうしますか? もっと正確に調べますか?」

「そうだね。 真相に気付きそうな奴もいるだろうし、クルト坊やの計画から逃げ出したい奴もいるだろう。 誰がどこまで関わりどうしたいのか調べなきゃダメだね。」

ただエレーヌとセドリックも僅か二日の調査では完全に裏取りまでしたとは言い切れず、より正確な調査が必要だった。

今告発すれば迷い悩んでる者まで一緒に断罪されかねないが、エレーヌからすると少しでも冷静に考え思いとどまる人間を増やしたかった。

やり方はともかくクルトの周囲には本気で国や人々を救いたいという人間が多いのだ。


「問題は元老院だね。」

そしてこの件の一番厄介な問題は元老院だった。

クルトのついでに高畑まで潰そうと関係ない関東魔法協会まで黒幕だと言い兼ねないのだ。


「ゲーデル議員と一部の過激な者達の首で黙らせるしかないでしょう。 二十年前の真相を掘り返されたくないのは元老院なんですから。 余計な欲をかかぬようにさせます。 それに麻帆良に手を出せば帝国が口を挟みますよ。 近衛詠春氏にテオドラ第三皇女殿下とジャック・ラカン氏にタカミチ君が二十年前の真相を揃って語れば元老院の話の優位性は無くなります。」

「出来るかい?」

「ええ。 必ず。」

エレーヌは最近の元老院を見てると能力の低い愚か者ばかりなため余計な欲を出して世界を滅茶苦茶にしかねない元老院に不信を抱いているが、セドリックはそれでも元老院をクルトと同調する過激な者を罰することで黙らせると言い切った。


「よし。 表向きはクーデター阻止の離反工作にしとけばいいだろ。 引き抜ける奴は引き抜きな。」

「分かりました。 やってみます。」

最終的に二人は少しでもこの件で処罰される者を減らすために工作を開始することで一致して、クルトと元老院をも巻き込んで情報戦と工作戦を始めることにする。

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