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二年目の春・7

「いや~。 なんとか形になりそうだね!」

一方地下室では美砂達とタマモが楽器の練習をしていた。

麻帆良祭まで半月を切りそろそろ麻帆良祭のイベントに参加するか決めねばならない頃な為、最近は練習時間を増やしてなんとか形になりそうなところまで漕ぎ着けている。

最悪異空間アジトで一週間くらいの練習合宿でもと考えていたものの、そこまでしなくても少なくとも音楽として成立してきてるのだ。

まあタマモはほとんどオマケみたいなものであるが間奏中に見せ場を作ることにしてるので、タマモはそこの練習をずっと頑張っていた。


「タマちゃん最年少だから人気者になるだろうね。」

「今でも十分人気者じゃん!」

他にも衣装の方はハニワ兵が張り切っていて美砂達がデザインした物を製作中だし準備は着々と進めている。

タマモ本人は去年のロックフェスティバルのイベントの映像なんかで見て勉強したものの、人前でバンド演奏をする意味を今一つ理解しきれてないが。

ただ人見知りとか緊張とかはほとんどしないので美砂達と一緒に楽器を演奏しながら歌を歌うくらいの感覚しかないとも言える。

正直さほど深く考えた訳ではなくなんとなく始めたバンド演奏だが意外に楽しくなっていて、イベントでどうなるかとハラハラドキドキしながらも楽しみにしてる部分もあった。


「アスナちゃんもコーヒー入れるの上手くなったな。」

「そうですか?」

「ああ。 マスターと変わらないんじゃないかな。」

同じ頃一階の店のフロアでは明日菜がカウンターの中でコーヒーを入れていたが、常連の年配者の一人がそんな明日菜の姿を眺めてコーヒーを入れるのが上達したと褒めていた。

元々お客さんに出す前にある程度練習して横島が認めてから出していたが、それでも拘るお客さんにはまだまだだと言われたことも以前にはあったが最近は褒められることも増えている。

実際コーヒーを入れる姿も様になっているし、自然に入れられているのでお客さんも見ていて安心だという面もあるかもしれないが。


「コーヒーを飲むのが日々の楽しみだから分かるんだよ。」

「楽しみですか。」

「学生達とかの賑やかな声を聞きながらコーヒーを飲むのも悪くなくてね。」

お世辞なにも静かにコーヒーを楽しむ店ではない横島の店だが、それはそれでいいと言ってくれる人も結構いる。

学生やタマモの賑やかな声を聞きながらコーヒーを飲み、昔を思い出して懐かしくなると語ってくれる人なんかも意外に多いのだ。

この常連はアナスタシアに夢中な年配者達に少し呆れつつも世代を越えて騒げるこの店の雰囲気が好きで、自分は参加は出来ないらしいが同じ空間でゆっくりと室内の賑やかな声を聞くのが好きらしい。

麻帆良には静な喫茶店も数は少ないがあるし今風なコーヒーショップもあるが、ある意味他では出来ない雰囲気で横島の店は常連を得ている。

まあ今時の年配者は縁側でお茶なんてよりファミレスでお茶するのも珍しくないので別に横島の店が特別ではないが。


「それにマニュアル化されたような応対や挨拶には正直何もかんじないんだよ。 悪いとは言わないが私は好きじゃない。」

それとあまり堅苦しいマニュアル化されたような対応や挨拶をしないのも実は横島の店では評判が良かった。

流れ作業のように応対されて急かされるような店よりは気楽に話が出来る店をと考える人が集まっているとも言える。

正直それほど特別なことはしてないがいつの間にかそれが店の売りになっていた。


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