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二年目の春・7

翌月曜は新しい一週間の始まりだが桜子の誕生日でもある。

すでに恒例となった誕生パーティをこの夜に開くことにして朝から店の営業の傍らで準備をする横島であるが、麻帆良祭のワンコひつまぶしの容器について特注出来るか問い合わせをしたりもしていた。


「フフフ。 人間同じことをしていたら同じ悩みに至るのは当然ネ。 そんな貴方にいいプレゼントヨ。」

「これって……」

そんな月曜の放課後に店を訪れていたのは超鈴音だった。

自信ありげな表情で不敵に笑い超は横島達にワンコひつまぶしの容器のサンプルを幾つか持参したが、その少し変わった容器に横島は驚きに満ちた表情を見せる。


「ちょっと変わった容器やね?」

「これは食べられる容器ネ。 大学部の研究室にちょっと頼んで試作したものヨ。」

厨房には横島と木乃香とのどかに夕映が居たが、自信ありげな様子で超が持参した容器が食べられる容器だと聞き一応に驚いてしまう。

まあ食べられる容器といえばソフトクリームのコーンをなど店にもあるが、正直それを使おうというアイデアは全くなかっただけに驚くのも無理はない。


「ワンコひつまぶしのアイデアはいいネ。 私達も考えてみたけど使い捨てはイマイチだし洗うのは手間ネ。 ならば食べてしまえばいいだけヨ。」

実は超包子でもワンコひつまぶしについて話を聞いてから検討していたが、ネックは盛りつけの手間と器にあるのは早くから気付いて考えていたようだった。

中途半端に使い捨てにするよりは食べてしまえる容器ならば全く話が変わってくる。

本物のお碗のような高級感は少し足りないが食べられるという要素を加えると全く違う料理になると言っても過言ではない。


「これ水分は大丈夫なのですか?」

「あまり長時間水分を入れておくとダメだけど、それなりに大丈夫ネ。」

「時間はまあ注意書きでもしとけばいいから問題ないが凄いこと考えたな。」

素材は米粉を主とするものと小麦やコンスターチを主とするものなど素材により幾つかサンプルを作って来ていて、それぞれに味や見た目に耐水性の違いなんかがある。

横島達の驚く顔に超鈴音もしてやったりと言いたげな顔をしているが、例の計画では散々だった彼女も決して無能ではないので本気で取り組めば彼女なりの答えを出すくらいは朝飯前だった。

天才少女の面目躍如といったところか。


「手間は一気に減るな。」

「これ使うんやったらお出汁は急須でもいけるんやないん?」

洗う手間はないし食べてしまえばゴミは増えないし一石二鳥な上に横島達としては出汁の提供の仕方に悩んでいたが、器の手間さえ無くなり出汁だけならば急須の数を増やして食器洗い機でもやれるのだ。

まあ衛生上の観点から食べられる容器の下には別途紙を巻くか敷く必要はありそうだがたいした手間にはならなく、あとはコストと大量生産出来るかが問題になる。

しかしここまで斬新な形になると使い捨ての容器では物足りないし普通のお碗では大変なので、より斬新な方にシフトする食べられる容器はある意味イベント向きな最後の一押しになる一手と言っても過言ではない。

夕映なんかはこの閃きと知恵を本当に悪用しないで欲しいと割と切実に願って超鈴音を見ていたが。


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