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二年目の春・7

さて横島の店の方は相変わらず賑わっていた。

麻帆良亭の元常連に横島の店の常連や日頃は場所的に少し離れているのであまり多くはない大学生なんかもこの日は来ていて年齢層も幅広かった。


「あら、本当にいいのかしら?」

「はい。 是非お孫さんやご友人のみなさんで来てください。」

ただこの日は先日春祭りで一緒に麻帆良亭の屋台を出した大学生達が訪れていて、大学部を中心にした出し物やイベントのチケットを坂本夫妻の妻に手渡していた。

中にはプレミア必死の人気アトラクションの優先チケットなどもあるし、関係者限定のチケットなんてのもある。

結局春祭りはボランティアとなってしまい売り上げを寄付したので主催サークルの面々は坂本夫妻になんとかお礼をしたいと夕映とのどかに相談した結果、坂本夫妻が今年の麻帆良祭を楽しみにしてるとの情報からチケットを集めて贈ることにしたようだった。


「ありがとうね。 孫も楽しみにしてるの。 是非使わせてもらうわ。」

「それは良かったです。」

麻帆良祭の本番は僅か三日ながら麻帆良の内外から多くの観光客も集まるし、当然ながら生徒達も楽しむ一大イベントなのでチケットの確保なんかは意外に大変なものがある。

その点大学生達は横の繋がりもあるのであちこちに声をかけてかき集めて来たらしい。


「私達この年まで麻帆良祭をゆっくり見物したことないから。」

「麻帆良祭では混雑してましたからね。 自分は何年か前に来たことがあります。」

「ええ。 覚えてるわ。 確か御両親みたいな方と一緒だったわよね。」

「はい! 田舎から両親が来た時です!」

大学生の中には閉店前の麻帆良亭に来たことがあるようで坂本夫妻の妻が覚えているとビックリしながらも話が弾み、まさか大学生もたった一度の来店で覚えていると思わなかったようで嬉しそうだった。

地元の祭りである麻帆良祭だが地元の商売をしてる人達は意外に忙しくて、なかなかゆっくり見られないなんてことがあるのは何処の祭りでも同じだろう。


「なあ、地元の人をプレオープンに招待出来ないか?」

「招待? プレオープンをまた早めるのか?」

「だって地元なのにゆっくり見られないなんてちょっと寂しいだろ!」

そして坂本夫妻の妻の話は大学生達に思わぬ思い付きを与えることになる。

一部の大学生達が大学部のイベントや出し物にアトラクションのプレオープンに地元の商売関係の人を招くことは出来ないかと言い始めると、大学生達は賛否両論の意見を出し合いながらも話は前向きに進展することになる。

プレオープンは早いとこだとすでに始めていて今日のような週末は学生で賑わっているが、地元の人達を複数のサークルで一緒に招待するということは未だかつてやったことがない。

ただ彼らの思い付きは複数のサークルが共感することになり、この年から徐々に参加サークルを増やしながら麻帆良祭の数日前のプレオープンに地元の人を大学部のサークルが合同で招待する習慣が始まることになる。


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