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二年目の春・7

同じ日高畑は横島から横島特性の気や魔力の質をも変える変化の札にて別人に変装して、密かに麻帆良を離れて東南アジアの某国に土偶羅の瞬間移動により来ていた。

飛行機での移動も考えたがパスポートが自分の物である以上は何処から情報が漏れるか分からず、かと言って犯罪となる偽造パスポートを用意するよりは瞬間移動にて密入国した方が露見する心配はないし誰かに迷惑をかけることもないので瞬間移動での海外訪問となっている。


「本当にタカミチかい? 悪いが使いとは話はしないよ?」

高畑と悠久の風のエレーヌ・ルボーンが待ち合わせしたのは高級リゾートの巨大ホテルのスイートルームだった。

エレーヌはカモフラージュの為に休暇として前日から部屋を取りバカンスを楽しんでいて部屋で待っていたが、現れたのは目印となる服装をしてはいるが明らかな別人に見えている。

一応約束していた時間に目印となる服装で来たので部屋には入れたが警戒は解かなく寧ろ何者なんだと怪しむ。

二十年前の魔法世界の戦争にも従軍したエレーヌはすでに40代半ばだが高畑のことはその分よく知っていて、気の質まで違う現れた人物に本人ではないのではと疑い出していたのだ。


「僕ですよ。 代表。」

まさか自分をよく知るエレーヌすら騙せるとは高畑も考えてなかったらしいが、明らかに警戒されたことで高畑は変化の札を解除して姿を現す。


「どうやら本当に本人みたいだね。 やれやれ麻帆良の新種の魔法符かい? そんなもの持ち出したってことは……。 英雄様も大変だね。」

流石に変化の札を解除するとエレーヌは高畑本人だと信じて警戒を解くが、両世界を股にかけるエレーヌでも見破れなかった変化の札に少し気が重そうにため息を溢しつつ盗聴や透視防止の魔法を使う。


「これはまあ関東魔法協会にも出してない特別製ですよ。 入手先は勘弁して下さい。」

英雄様と言われた高畑は少し苦笑いしてエレーヌが興味を持った変化の札の入手先について詮索しないように頼むが、英雄様という少し皮肉にも感じる言葉には多少苦笑いする程度だ。

エヴァの修行を受けてある程度戦える自信が出来た高畑が実戦に出た頃に世話になったのはエレーヌになる。

ガトウやエヴァには教えてもらえなかった戦う以外の調査や潜入に人々との接し方など現地の実情に合わせた仕事のイロハを叩き込んでくれた師にも等しい存在だった。

彼女は昔から高畑を英雄様と呼ぶが、それは決して英雄様にはなるなという高畑に対するメッセージであり教えだと高畑は考えている。


「近衛のじいさんでも手に余る話を持ってこられても困るんだがね。 話ってクルト坊やのことかい?」

「そうです。 僕達が入手した情報に気になるものがあるんですよ。」

「クーデターなら成功しないよ。 メガロメセンブリアが多少は混乱しても魔法世界にも地球にもたいした影響はないだろ。 一番影響を与えそうなタカミチが麻帆良で大人しくしてればね。」

少し口が悪いエレーヌに高畑は久々の懐かしさを少し感じるがお互いに忙しい身であり昔話をするほど余裕はない。

さっそく本題に入るがエレーヌは高畑の用件をある程度察していたらしい。

クルト・ゲーデルのクーデターに関しては鍵を握るのは高畑や赤き翼の生き残りだが実質的に動く可能性があるのは高畑だけであり、逆に言えば高畑さえ大人しくしてれば魔法世界にも地球にもたいした影響はない。

無論魔法公開の計画さえ知らなければ。


「まあ、これを見てください。」

高畑はそんなエレーヌに土偶羅と近右衛門がエレーヌに見せても不自然に思えぬようにと情報を意図的にぼかして纏めた調査報告を見せるが、最初はあまり興味が無さそうだったエレーヌも次第に表情が強ばる。




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