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二年目の春・7

そして夕食までもう少しという時間になると店にはいつものメンバーに加えてこの日は雪広さやかも来ていた。

日暮れの遅い季節なだけに外はまだ完全に日が暮れてはないが時間も時間なので身内意外の客は数えるほどしか居ない。

横島はまき絵と亜子に頼まれ占いをしてやっているようで、そんな姿を見た木乃香は夕食の仕上げをしつつふとこの当たり前の環境とこれからについて考え始める。

ずっとこのままみんなで一緒に居られたらと木乃香は考えているし、明日菜や夕映達をふくめた身内は少なくともそれほど認識が違わないことは理解もしていた。

ただ修学旅行にて美砂に言われたことも頭には当然あり、木乃香は自身が横島をひとりの異性として好きなことを自覚もしてもいる。

加えて木乃香には他にも東西に祖父と両親が分かれた魔法協会という大きな問題もあり、今現在ようやく始まっている東西協力もまだどうなるか分からないのが分からないほど子供ではない。

それと東西協力が祖父と両親の悲願なのは理解しているが、何故今になって始まったかは横島の影響がかなりあるのではと夕映とのどかが以前に推測していたのを木乃香もその通りだと感じていた。


正直木乃香は魔法協会という組織を未だにどう受け止めるべきか決めかねている。

魔法協会の存在を知り半年が過ぎたが自身が何も決めてないにも関わらず、後継者のように見られている現状に戸惑っている部分もあるし不安もある。

時が来れば自分も望まぬ立場に祭り上げられるのではという可能性に気付かぬほど木乃香は愚かではないし世間知らずでもない。

ただ修学旅行の時に美砂ですら言ってたが横島なら自分を理解してくれて、将来的に魔法協会との関わり方を決めねばならなくなっても側にいて一緒に考え助けてくれるのではと期待も心の何処かでしている。


「木乃香? どうかした?」

「ううん。 このままずっとみんなで一緒に居られたらええなって。」

気が付けば木乃香は思考の渦に埋没しそうなほど考えていたが、そんな木乃香にのどかが気付き心配そうに顔を覗き込んでいた。


「大丈夫だよ。 きっと。 私達もみんなが家族みたいなものだから。」

木乃香の表情に微かな不安があるのを察知したのだろう。

のどかはかつてならば考えられぬほど確かな自信がある表情で大丈夫だと口にして木乃香を安心させる。

最初はタマモが使っていた家族という言葉。

それが動物の群れ的なニュアンスが入っていたことを木乃香達が気付いたのは割と最近のことだ。


「横島さんモテるのに自覚せえへんから。」

きっと横島は困った時は助けてくれるのは理解しているし信じているが、結局考えていくと一番不安になるのは横島が見知らぬ誰かを好きになりその人の元へいってしまうことだろう。

普段はともかく危機的な状況になればなるほど頼りになる横島の一番の不安はやはり女絡みだった。


「ハルナが言うみたいに私達で横島さんの一番になるしかないのかもね。」

のどかは木乃香の不安の原因に思わずクスッと笑うと時々ハルナが言うことだが、さっさとハーレムで囲ってしまえという些か暴論が正しく思えてくる。

誰もがその可能性を理解していて横島が普通の人間でないことや超魔法技術に異空間アジトがあることを考えれば一番丸く収まるのではと思いもするが、はっきりとハーレムにしてしまえばいいと言い切るのはハルナくらいだった。

日本人的な倫理観もない訳ではないしのどかなんかは実の家族にどう説明すればと頭を悩ませてもいるが。

しかしそれでも同じ人を好きなら分け合うべきだと、高らかにさも当たり前のように主張するハルナにのどかと木乃香も少し毒されて来ていた。


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