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二年目の春・7

私は何をしているんだろう。

夕映はふとそんな言葉が頭に浮かんだ。

放課後のこの時間に彼女は麻帆良市内のとある会議室にて、大学生達とあやかと共に納涼祭の打ち合わせを商店街の人達としている。

納涼祭の実行委員会としては麻帆良祭までには概要を纏めて最低でも宣伝用のポスターは麻帆良祭にて掲示したいので、早めに大まかな概要だけでも纏めたかったのだ。


「オリジナリティか。」

「はい。 我々は食に特化した祭りにする予定です。 北は北海道から南は沖縄まで全国を六つの地域に区分けして郷土料理や地方のグルメを提供する準備をしています。」

今年の納涼祭のテーマは食であり、商店街の側にも何か他の祭や麻帆良祭とは違ったオリジナリティを多少は出してほしいのが実行委員会の側の意見になる。

実際の話し合いはあやかと大学生達が商店街の幹部と話し合っているので夕映にはさほど重要な役割がある訳ではないが、一応横島の代理として居なくてはならないし納涼祭実行委員会ではそれなりに仕事もしているので横島と違いお飾りではない。

ただまあ中学生の身分であることには変わりなくスポンサー代表の立場でもあるあやかと違い、あまりでしゃばるのは良くない。

尤も夕映が大学生や大人達に評価されてるのはそんな気遣いが出来ることでもあるので、大人しくしてるはずが何故か周りから注目されるので本人は若干困惑していたが。


「それほど難しく考えなくても皆さんの家庭の味や賄いメニューなどで構いませんわ。 それに各店の商品をそれぞれ自由に売るのも構いません。」

さて商店街との交渉だが実行委員会の側としてはとりあえず基本的なコンセプトを理解し共有してもらえるなら後は、商店街の方である程度自由にやって貰って構わないというスタンスだった。

基本的なコンセプトが食になっているので飲食店では賄いや裏メニューなど日頃味わえない料理を提供してくれればいいし、他の店に関しても必ずしも飲食関連で参加して欲しい訳ではない。

しかしまあ商店街の方にもプライドがあるので食で味を競うように全国のグルメを提供すると言われると半端なものは出せないし、いつもの祭りと同じ物を出してつまらないと思われたら本末転倒になる。

実際商店街の側も意思統一は必ずしもされてなく納涼祭の本気具合が気に入り納涼祭参加を勧めた者も居れば、よく知らないまま昨年のようなちょっとしたお祭り程度なんだろうと甘く見ていた者もいる。

力の入れようも納涼祭への意欲も様々な上に、そこに麻帆良の将来を担う可能性のある木乃香の恋人らしいと噂される横島が主催者になっているからとりあえず繋がりを求めて参加を打診したと言うのが実情だった。


「飲食店はなんとかなるだろうが、問題は他か?」

「何か楽しめるイベントでもしていただくなどしても構いませんが。」

肝心の横島はお飾りで滅多に顔を出さないし商店街との話し合いにもまだ顔を出してない。

商店街の側は横島の前に納涼祭に本気で取り組まねば恥をかくことになると、麻帆良祭の準備をしながら検討しなくてはならなくなっていた。

ちなみにこの日夕映はほとんど発言する必要すらなく出されたお茶を飲み打ち合わせの話を聞きながら、時計型通信機のナビゲーションキャラのハニワ兵とリバーシブルをこっそりしていたりする。

商店街の人達はそんな夕映に噂の才女は無口だと余計に注目していたが、そろそろ夕映の噂も実際より大きくなっているだけだった。

元々必要がなければさほど口を挟むタイプではないのだから。

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