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二年目の春・7

「やれやれ、立派な魔法使いの国は自分達でテロリストの対処も出来んのか。」

一方この日の夜には近右衛門と詠春と穂乃香に雪広家と那波家と横島と芦優太郎というフルメンバーが、近衛邸に土偶羅の空間転移により集まりクルト・ゲーデルの件を話し合おうとしていた。

ただ開口一番で愚痴を溢したのは雪広清十郎であり、彼はクルトをテロリストだと断言した上で放置しているメガロメセンブリアに対してあきれ果てている。

清十郎のクルトの評価は元々はそれなりに高かったのだが、流石に今回の自分達の為に地球側の世界を巻き込もうとする計画は全く評価していない。


「現役の議員ですもの対応が難しいのは仕方ないわ。 それに法を無視してる相手に対して法治体制では後手に回るのは仕方ないとおもうわね。」

そんなあきれと共に珍しく苛立ちが見える清十郎に那波千鶴子がなだめるようにメガロ側の対応の難しさを語った。

クルト自身はただのテロリストではなく現役のメセンブリーナ連合の元老院議員であるし、支持を失っているが赤き翼の看板も健在なのだ。

しかも無能な男でもないので下手に動くと思わぬ痛手を被る可能性もあり、メガロの政界でも出来れば関わりたくない男として見られている。

清濁併せ飲むことも出来るし人々の為にとの信念もある立派な人物には変わりないのだが、信念がある分妥協や人の話を聞かない部分もあったりして扱いにくいとの評価もあった。

現状ではメガロメセンブリアの情報当局もクルト一派が再び動きを活発にしていて一部の軍の将校や連合内の独立派などとコンタクトを取ってることは掴んでいるが、相手は世界の秘密やら二十年前の真相を知る元英雄の議員であるので上層部が警戒はしても、いざクルト一派を公式に捕らえるには及び腰な部分もある。

あまり追い詰めて秘密をしゃべられても困るし、地下に潜り反メガロの活動でもされたら困るので上層部とすれば現状のまま飼い殺しにしておきたいらしい。


「現段階で魔法の公開も困るし、彼が地下に潜って魔法世界の救済活動するのも困るよね。 こっちにも彼と気が合いそうな極端な人達も結構いるし。」

「そもそも彼の計画の移民というのがくせ者だよな。 大人しく受け入れ先の国の国民になればいいけどならないと将来の禍根になるよ。」

続けて雪広政樹と那波衛の二人が意見を言うがクルトの良し悪しは別にして、彼の計画は地球側にメリットが少ないのが現状であり客観的に見て善意による救済でしか手を差し伸べる理由はほとんどない。

最終的にはクルトは魔法世界の人間達を移民として地球側に戻したいらしいが、そもそも移民とはデリケートな問題なのだ。

一歩間違うと不要な問題を永続的に産み出す原因にもなりかねなく、移民国家のアメリカやカナダとて様々な問題が根深くある。


「あんまり言いたくないけど超君のもたらした技術も地味にクルト君の計画の禍根になりそうなんだよね。 彼女がもたらした人工知能と工学系技術はこの先いろいろな分野で普及するよ。 うちと那波のとこでも工学部と共同研究してるけど人手不足の業界が機械化するのもそう難しくない。 移民が来ても働き口がないなんて時代が来る可能性がある。」

「横島君とこのハニワ君達もそうみたいだけど単純労働は機械化されるだろうね。」

それとクルトは知らないが超鈴音の計画によりもたらされた未来技術も地味にクルトの計画の禍根になりそうであった。

少なくとも初期型の茶々丸と田中さんというアンドロイドは工学部にて正式に実験している物なので、研究には雪広や那波の技術者も加わっていて技術は両社や関連する企業にもすでに伝わっていてその恩恵が世に広まるのもそう遠い未来ではない。

費用の問題からすぐに切り替わる訳ではないのだろうが、下手な移民を入れるよりは機械化とロボットの活用で良くなる時代はすぐそこに来ている。

政樹や衛からすると将来的にはハニワランドのように重労働や単純労働は機械化されていくだろうし、魔法世界の技術の移民が相応に落ちると見ていた。

まああくまでも地球側に移民を受け入れるとするならばの話だが。



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