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二年目の春・7

「ワシらも行けば良かった。」

一方翌日の横島の店ではスポーツ新聞を見ながら年配者達が前日のホームランとその後の話を羨ましげに聞いていた。

年齢的にも野球好きでリアルタイムで野球中継を見ていた者達も多く、横島から記念に貰ったバットやバッティンググローブにタマモのマスコットのぬいぐるみを見せて貰ってはため息を溢す者もいる。


「たのしかったよ!」

タマモは初めてのプロ野球観戦にて少なくともプロ野球は楽しいものだと認識したらしく、ご機嫌でスケッチブックに昨日の絵を描いていた。


「アナスタシアも凄いのう。」

なおアナスタシアは昨日大学生や一部プロ野球選手から貰った連絡先が書かれたメモや名刺を年配者達に見せていたが、数が二十枚ほどあり年配者達を驚かせている。


「どいつもこいつもスケベ根性丸出しにしおって。」

「男なんてそんなもんじゃよ。」

流石に昔の横島ほど露骨ではないが根底にあるのは結局スケベ根性でありアナスタシアを呆れさせていた。

彼女自身実年齢が実年齢なので今更人間の本質をどうこう言う気はないようだが、かつての自分の立場と比べると若干ではあるが思うところもあるらしい。


「アナスタシアはワシのもんじゃ!」

「いいや、ワシのもんじゃ!」

「お前達、そのようなこと言うておるとボケたのかと疑われるぞ。」

ただアナスタシアが若い学生達や野球選手にモテモテだったと聞き嫉妬を露にする年配者なんかも居て、流石に同じ年配者のなかでも冷静な人にたしなめられている。


「何度も言わすな。 私はあの男のモノなのだ。」

何と言うか自分達のアナスタシアを盗られると危機感を感じてるようで騒ぎだしたようだが、アナスタシアがやはり呆れたように自分は横島のモノだと告げると年配者達は羨ましげに横島を見つめた。

正直アナスタシアも最初は軽い冗談のつもりだったのだが、周りが信じて疑わないことと状況が自分に都合がいいことから横島との誤解を最近は利用してもいる。

尤も横島が否定しても誰も信じぬ様子は少し滑稽にも感じているが。

かつて望まぬ不死となったことや有らぬ罪を着せられた時にそれを訴えたことがエヴァにもあったが、誰も信じてくれなかったのだ。

問題の次元や質は違うが結局今も昔も人の本質など大差ないと実感させられる瞬間でもある。

まあ横島の件はアナスタシア自身がかなり横島に惹かれてることを自覚しているので、客観的に見て横島の意見が信じられないのも仕方ないとも思うが。

ただ彼女自身は別に横島の伴侶となり永久に共にとまでは今のところ考えてない。

悠久の時を生きるアナスタシアにとって愛されたいとは思うかもしれないが婚姻という関係に必ずしも縛られる必要はあまりなかった。

横島が麻帆良を離れる時は着いていくくらいは考えているが。



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