このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

あの素晴らしい日々をもう一度

さて横島と陰念の試合だが、予想通り魔装術を使う陰念の限界が見え始めていた。

これはある意味では心眼の予想通りの展開だが、無論陰念も全く考えてない訳ではない。

元々横島が使っている常時展開型の結界は、霊力消費が激しい術なのである。

それは陰念の魔装術も同じだが、横島は陰念の前に一試合結界を用いて戦っているし長期戦になればいずれ霊力が尽きるだろうとの読みもあった。

ただ陰念の誤差は横島の術は小竜姫の霊力を使ってることで、今回の試験に限っては限界がないことか。


「そろそろ限界だな。 終わらせるぞ」

試合がどちらに有利かは会場の誰もが理解している。

陰念は横島の結界を破れずに呼吸が荒くなっており、最早動きにキレも無くなっていた。

心眼は陰念には本当にこれ以上奥の手がないと悟ると、決着を付けることを決意する。


「貴様のような!!」

そして次が最後だと感じていたのは陰念も同じだった。

魔装術が限界なのは本人が一番理解しているが、魔装術を使って勝てない相手に術を解くことの意味は一つしかない。

勘九朗や雪之丞には日頃から見下されて来た陰念にとってこの試験は特別な意味があった。

この試験で勘九朗と雪之丞を叩き潰し自分が一番になる。

陰念にはそんな思いしかなく、ボンクラそうな横島になど敗れるなど認められるものではない。


そのまま限界まで力を引き出し最後の攻撃をしかける陰念の魔装術が横島の結界と激突するが、二人の霊力がぶつかり合うと霊気がスパークするもやはり結界にはヒビ一つ入ることはなかった。

そして力を失った陰念は魔装術のコントロールすら危うくなるが、そんな無防備な姿は攻撃する絶好の機会となる。

小竜姫の過去においては横島の霊力切れの為に心眼は反撃が出来なかったが、力を使い果たし暴走寸前の陰念ならばあの時の横島と心眼でも霊力さえあれば十分倒せた相手だった。

心眼は魔装術が覆われてない顔面にバンダナから霊波砲を放つと、陰念はあっさりと吹き飛ばされて試合場を包む結界にたたき付けられて終わる。

それはこの試験において始めて心眼が反撃に転じた瞬間であった。



(所詮クズはクズということか。 それにしてもあのボウヤの力は……)

一方小竜姫とメドーサの二人は、双方共に冷静なまま無言で試合を見守っていた。

メドーサは陰念の戦いに失望しながらも、横島が小竜姫の竜気を使ってることに気付いている。

ただメドーサとしては小竜姫が何故令子ではなく、横島に力を貸したのか理解出来なかったが。



「陰念にしては上出来かしら」

「あの結界の中から攻撃されるのは厄介だな。 迂闊に近付けん」

「それも狙いでしょ」

そして勘九朗と雪之丞は陰念との戦いから横島の基本的な戦い方を推測し渋い表情をしていた。

二人はある程度は最初から推測していたようだが、横島の結界の真価は中から攻撃が可能かどうかで全く変わる。

横島にダメージを与えるには結界を破らねばならないが、中から攻撃が来る以上は迂闊に近付けない。

ならば遠距離からの攻撃が必要になるが、あの結界はそう簡単に破れそうにないし困ったことに横島にも遠距離攻撃のオプションがあるのだ。

陰念のように霊力切れを狙うのも一つの方法だが、勘九朗も雪之丞もその方法では勝てないと感じていた。

とりあえず試合が無事に終わりホッとする横島を見ながら、二人は緊張感があまりない横島の見た目に騙されてはダメだと気を引き締めていた。



20/48ページ
スキ