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プロローグ

それから数日後、平和を取り戻した世界はゆっくりと復興を始めていた

テレビでは今だに特別番組が流され、大霊症の原因や被害の模様などを延々と放送している


コスモプロセッサーの存在こそ秘匿されたが、核ジャック事件の犯人の魔族が起こした大霊症と言うことは発表されており、中でも美神親子は人類を救った英雄として連日テレビや新聞で讃えられていた


世界の為に命の危険もいとわずに、最上級魔族に戦いを挑んだ美神親子とその仲間達

何故か名前が出るのは美神親子がほとんどであった


美智恵の巧みな情報操作や根回しにより、報道は事実とは違った内容になっている

事実を知る関係者には違和感を隠せない者も多いが、そんな関係者達はアシュタロスと直接戦ってないため何も言えない


しかも戦後の混乱や後始末に忙しい者も多く、結局美神親子が中心になりアシュタロスを討伐したことが事実として世の中に広がってしまう



そんな世界とは関係無いような静かな部屋で、横島は一人窓から見える空を眺めていた


心にあるのは今までに感じたことが無いほどの喪失感と悲しみ
 
そして、ルシオラを見捨ててしまった自分への怒りである


他に方法は無かったのか?

本当にあれでよかったのか?

横島の頭には答えの出ない疑問がひたすら響いてくる

何も考えたくないのに、頭は勝手にあの戦いを思い出していくのだ



まるで光と影のように状況が違う令子と横島

自らが原因にも関わらず、世界を守った英雄として世間から注目を集める令子

そしてそんな令子に巻き込まれる形で、多大な犠牲を払い世界を守った横島

このあまりに事実と違う結果も、令子と横島の間に決定的な溝を作る一つのキッカケになる



その頃、美神事務所ではおキヌが一人で横島を心配していた

令子はここ数日アシュタロス戦の後始末に忙しく事務所に居ないのだ

事実の隠蔽や情報操作など、アシュタロスと自分の関係を知る者達の口止めに忙しい

それに英雄となった令子には、取材やテレビ出演なども依頼が殺到していた

最も、後始末に忙しく全て断っていたが…


「横島さん大丈夫かな?」

あれ以来仕事が無いため姿を現さない横島を心配するおキヌだが、彼女は事務所で心配するばかりで何も行動しない

令子に数日はそっとしておくように言われたことが主な理由だが、横島を心配する気持ちと同じくらいに、横島がルシオラを愛する姿を見たくないと思う気持ちも心のどこかにあった

そしてそんな気持ちは令子もある

二人共に無意識ではあるが、ルシオラのことを避けている


過ぎてしまったこと

亡くなった人は戻らないのだから、横島なら乗り越えてくれる

そんな信頼と期待があったのかもしれない


今まで数々の危険や困難を共に乗り越えて来た横島だからこそ、二人は信じているのだろう



しかし……

令子やおキヌは一つ大きな過ちを犯している

いや二人だけではなく、横島の周り全てかもしれない

横島が普通の人間と変わらない、ただの少年だと言う事実に気が付いてない


そして、この時のささいな違いが全ての始まりになっていくことに、誰も気が付いていなかった


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