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二年目の春・7

「ではスポーツニュースです。 日売の松岡選手にとうとう出ました! 500号!」

横島達がまだ食事をしている頃、夜のニュースでは松岡選手の500号ホームランがスポーツコーナーの一番手として映像付きで流れていた。

相手ピッチャーの投げたボールを高々と打ち上げてスタンドに放りこむところまでしっかりと映像は流れていて、最後は横島と少女達や大学生達が驚く様子まで流れている。


「なあ、いまスタンドに桜子居なかったか?」

「まさか。 あの子野球なんて興味ありませんよ。」

「だよな。 なんか凄い似てる子が映ってたんだ。」

テレビ局により扱いは微妙に違うが一瞬映った娘の姿に椎名家でテレビを見ていた桜子の両親はチラリと見ては居たが、野球に興味がない娘が球場に行くわけがないと他人のそら似だと笑って流してしまう。

そんな両親が桜子が球場に居たのを知るのは翌日の夜で松岡選手のサインボールを貰ったよとメールが母に届いた後になる。


「先輩、これお嬢さんじゃないですか?」

「なんだ? ああ昨日の松岡の500号か。 って確かにこれ娘だな。 野球はテレビの番組の時間が変わるから嫌いだって言ってたんだが。」

そして翌日にはスポーツ新聞のほぼ全てで一面かそれに近い扱いでデカデカとホームランの記事が載っていて、中にはスタンドの横島達をアップにした写真を一面に乗せてホームランボールが観客のビールの紙コップにホールインワン!なんて書かれてる新聞もあった。

美砂の父が娘が野球を見に行ったことを知ったのは仕事が始まる前に同僚が読んでいたスポーツ新聞の写真に以前美砂と会ったことがある者が居て偶然気付いたらしい。

父は野球など興味が無かった娘が外野席で友人らしき少女達と大学生らしき人達と楽しげに野球観戦してる姿が信じられずに不思議そうに新聞を食い入るように見ている。


「なんか去年の年末から妙に優しいんだよな。 うちの娘。 小遣いでも欲しいのかと思ったがそんな話もしないし。」

「珍しいですね。 思春期には反抗期とか父親をうざがるなんて聞くのに。」

「やっぱり麻帆良学園に入れて正解だったな。」

「鈴木部長の話だと凄い学校みたいですけど、あそこお金大変だって話ですよね?」

「噂ほどじゃないよ。 どのみち高校大学は私立はどこも高いからな。 もちろん安くはないけど。」

美砂の父は娘の意外な行動に驚くも元気そうで何よりだと表情を緩める。

しかしそれと同時にここ最近の娘の変化には首を傾げたくもなるようで、今時らしい少し父を避けたがる子供だったのに急に優しくなったことには不思議な感じも受けてるらしい。

ただ嫌いだと言ってた野球を見たりといろんな体験をしてるんだなと思うと麻帆良学園に入れて本当に良かったと顔を綻ばせた。

柿崎家にとって麻帆良学園に中等部から大学卒業まで通わせるのは大変な負担だが、学校と学校生活を楽しみ夢を持つような大人になってほしいと父は送り出している。

離れていても一つまた娘の成長が見れた父は気分を新たにこの日も仕事に励むことになる。



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