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二年目の春・7

「ありがとうございました!」

選手達との食事会は長いペナントレースを戦う選手達のことを考慮して一時間半ほどで終わり解散となるが、夢のような時間を過ごした大学生達は別れ際に選手達と清十郎に対して一斉にお礼を告げると深々と頭を下げた。

彼らは選手に一目会いたいと横島に着いて行ったら、あれよあれよと流されるように本来関係者でもなかなか出来ない体験をしたことをよく理解している。

大学生達はサインを貰い写真を一緒に撮り乾杯までしたのだ。

一生の想い出に残る日になったことは確かだろう。


「ワシも久々に楽しかったわい。 また機会があれば一緒に食事をしよう。」

清十郎は流石に夜遅いのでタクシーにてホテルから帰るが、最後まで気さくなお爺ちゃんという雰囲気のままに楽しげに帰っていった。


「あれだな。 男が惚れる男って本当に居るんだな。」

「あの人の為なら全力で働きたいって思う。」

「カリスマって言うのか? 噂ではいろいろ聞いてたけどリアルに体験すると納得するわ。」

「今の麻帆良学園があるのあの人のおかげなんだよな。」

選手達や清十郎を見送った大学生達は緊張から解き放たれたのか一息ついて余韻に浸るが、プロの選手達の凄さもさることながら清十郎の人としての魅力に心奪われていた。

説教臭いことなど何一つ言わないし自慢をする訳でもなくただ一緒に楽しんだだけなのだが、男は背中が語るなんて言葉がこれほど似合う人は居ないと感じるほど大学生に強い衝撃を与えている。


「マスターもみんなもありがとう!」

「アナスタシアさん! また一緒に飲みましょうね!」

すでにタマモはお眠のようで横島におんぶされて睡魔と戦っているが、大学生達と別れて帰る時は眠そうにしながらも手を振り別れていた。

横島と少女達は元々大学生達とはそれなりに親交があるので変わらないが、今回一番の変化はアナスタシアが大学生達を女として魅了したことだろう。

プロ野球選手達の中にもアナスタシアに目を奪われていた者が多く、アナスタシアが横島の元カノで今も深い関係だと聞いた選手達を羨ましがらせてしまい横島を戸惑わせたが。

彼女が今も魔法世界で恐怖の象徴たる存在であることを知るものは誰一人居なく、魔法関係者も混じっていたが彼らでさえアナスタシアとエヴァンジェリンが同一人物だと気付けた者は皆無だった。


「なんかこう女王様みたいなヒトだったな。」

「女王様って言うとちょっと違うイメージが。 女帝って言った方が似合わないか?」

「姫と女帝かぁ。 マスターの周りは凄いな!」

そしてこの日以降アナスタシアは、麻帆良の女帝という新たな異名が増えることにより大学生達と関わっていくことになる。

偶然の成り行きとはいえ気高き魔王様は年配者のアイドルとなり学生達の女帝へとジョブチェンジすることになった。

その影響は見えないところで静かに歴史へと広がることになる。

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