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その二

一方先に自宅に戻った横島は、寝室で制服から私服に着替えているところである


「忠夫さん、少し言いすぎでしたよ」

着替え終えて少し憂鬱そうな横島の元に、百合子を案内し終えた魔鈴が来ていた

憂鬱そうな横島を気遣いつつ、魔鈴は先程の横島の対応を注意している


「おふくろが心配してるのは、わかってるんだけどさ。 ただ、いきなりプレッシャーをかけて来たおふくろを見たらつい……」

基本的に魔鈴には素直になれる横島は、魔鈴の指摘に少しバツが悪そうに言いすぎたと反省をし始めていた


そもそも百合子は今の横島を知らないため、昔と同じ対応で当然なのだ

未来のように横島を見直すほどの事は無い訳だし

対して横島は、百合子が強引な事や力で無理矢理言う事を聞かせようとする事など知っているのだから、横島が百合子に合わせるべきなのだ

まして横島の精神年齢は20代後半なのだから、あんな態度は大人として良くないと魔鈴はやんわりダメだしをする


「気持ちは良くわかりますが、怒りをぶつけ合っても解決しませんよ。 それに今の忠夫さんなら大丈夫です。 自信を持って下さいね」

横島が言う事を理解したら、すぐに励ましてやる気や自信を持たせる

基本的に魔鈴はこの方法で、長い時間をかけて横島を変えて来た

元々自己不信の強い横島なだけに、あまりダメだしをすると逆効果になるのだ

飴と鞭と言う訳では無いが自己不信や劣等感の固まりの横島には、注意よりも自信を持たせやる気を出させる方に重点を置かれていた

この辺りの気配りの細かさは令子や百合子には無いものであり、図太く見えるが実は繊細だった横島が現在のように成長したのは、やはり魔鈴の教育がかなり影響しているようである


「そうだな…、いつまでもいがみ合ってもダメだよな~」

時間にして僅か10分ほどだったが、横島はある程度の気持ちの切替えが出来ていた

無駄に意地を張るよりもしっかりしたところを見せた方がいいと思い、魔鈴と共に百合子のところへ行く



そんな横島と魔鈴がリビングに入ると、部屋は微妙な空気が流れていた

ケイは先程の事で百合子を怖がっており、タマモとシロの後ろに隠れている

タマモとシロの二人は未来を知るがゆえに百合子に対して好意的ではあるが、初対面なため自分から話も出来ずに部屋は終始静まり返っていた


「おふくろ、夕食どっか外に食いに行くか? ナルニアじゃ外食なんてなかなか出来ないだろ」

先程の事など無かったかのように普通に話し掛ける横島に、百合子は少し目を見開いて驚く

先程の状況から考えると、横島にしてはあまりに切り替えが早いのだ

わざわざ挑発した問題は解決して無く、以前の横島なら同じ話を何度もして来るだろう


「ええ、任せるわ」

夕食は自分が作るか魔鈴の腕を確かめようと考えていた百合子だが、予想外の横島の行動に任せる事にしていた


(少しは大人になったじゃないの……、彼女が何か言ったようね)

初対面の迷惑そうな表情はまるで無い横島に、百合子は魔鈴が何かしたと気が付いている

わざわざ挑発するような事を言って横島の本質を確かめた百合子は、切り替えの速さなどから横島の成長度合いと魔鈴との関係を試していたらしい


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