会うたびに違う表情をする横島に、魔鈴は興味が沸いていた


「一体どれが素顔の横島さんかしら…」

まるで別人のように噂と実際見た横島は違っているのだ

西条も相手を見抜けないほど馬鹿では無いのだろうし、魔鈴は理由がわからない


（それに強い…　前に助けられた時も思いましたが、予想以上に強いです）

雪之丞に関しては仲間内の評価とさほど違いは無いのだが、横島に関しては仲間内の評価とまるで違っている


（普段は落ち着きがなく逃げてばかりで、ここ一番の時だけ異常なほど力を発する…？）

助けられた時と今回の二回だけしか魔鈴は知らないが、その評価はあまりに違う気がした


（美神さんは非常識の固まりですから相手の評価もしないのかもしれませんが、何故周りの人みんなが同じ扱いなのでしょうか？）

魔鈴にとって横島の周りのメンバーとは、西条以外は軽く挨拶をした程度の知り合いでしかないのだ

そんな魔鈴には横島も不思議だが、周りの人も不思議であった

経験不足な点はあるとしても、現時点では十分過ぎるほどの力と経験があるだろう

何故わざわざ見下してやる気と自信を無くさせるのか理解に苦しむ

魔鈴は横島とその仲間達を考えれば考えるほど、わからなくなっていた


（まあ、いいです。　私は私ですし、私の目で見たものを信じましょう）

自分は横島を特別視するのはやめよう

この時魔鈴は、横島を一人の人間として普通に接して行こうと決めた


あの時見た別人のような悲しみに満ちた表情の謎も、周りの人の評価と実力が違い過ぎる謎も全て自分で見極めようと魔鈴は思う



そんな魔鈴の決めたことは、ごくごく普通の当然の対応である

しかし横島の周りでは、横島を純粋に普通の人間として見る者は皆無と言ってよかった

そんな環境に生きる横島にとって、唯一普通に接してくれる魔鈴の存在は着実に大きくなっていくことになる


ルシオラを失って以来、他人を避け続ける横島と結ばれることになる大きな理由は、こんなささいな普通の行動から始まっていた

もちろんこの時の魔鈴は、そんな未来が待っているとは思いもしないだろう


何気ない一日、横島と魔鈴にとって初めて一緒の仕事をしたこの日が、横島と魔鈴の未来を決める重要なポイントになったことは本人達も気が付くことは無い