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二年目の春・6

「もげてしまえ!」

「そりゃ酷くないっすか?」

この日も日中はいつもと変わらぬ様子で店の営業をしていたがお昼過ぎになると、魔法協会の新人研修で会った女子大生がまた来ていて懲りずにアナスタシアと火花を散らしていた。

横島はそんな二人を他人事のように眺めていたが、常連の年配者の一人には年甲斐もなく羨ましげに見られていて遠慮なくもげてしまえと言われる。


「すっかりアナスタシアのオモチャじゃな。」

「あの子も見た目は悪くないんじゃがのう。」

相変わらずなんとか横島と親しくなろうと店に通っている女性だが、男を見る視点がやはりお金と魔法使いとしての実力という点でどんどん横島が苦手なタイプとなりつつあった。

ぶりっ子というほどではないが裏表が激しいのは横島のみならず常連の年配者達も気付いていて、アナスタシアにも一見すると笑顔で話しかけてまるで友人のように振る舞っているが。

ただどうも女性はアナスタシアが横島に捨てられても未練がましく付きまとってると考えてるようで、無職を心配する素振りをしつつ国に帰れという内容を口にしたりしていた。

まあ見た目ではやはり勝てないのを悟ってか内面やら日本女性の良さを語ったりと自分の良さをアピールするように張り合うものの、横島や年配者達からみるとアナスタシアにからかわれてるだけにしか見えないのが実情になる。


「やはりアナスタシアに勝つには経験不足じゃな。」

実のところ女性はそこまで性根が腐ってる訳ではなく幸せになりたいという想いが強すぎることと、あまりいい恋愛をしてきてないことが原因に思えるため年配者なんかは面白がってはいるが同情的な者も居た。

別に資産や仕事で相手を選ぶことは悪いことではないのだ。

しかし年配者達から見ても横島が今までに女性に愛されてきただろうことは明らかであり、横島とは価値観が合わないのは致命的である。

もっと言えば横島の周りには恋人でなくとも、互いに思いやり一緒に笑える女性や少女達が何人も居る時点で女性に勝ち目はない。

いい家に住みいい服を着ていい物を食べるのが幸せだと考える女性と、一緒に笑えるだけで幸せだと考える女性が居れば誰だって後者がいいのは明らかだった。


「羨ましいのう。」

まあアナスタシアはそこまで素直でもシンプルでもないが横島の周囲の少女達に信頼されるだけの器の大きさと包容力のようなものはあるし、今火花を散らしている女性にしてもまともに相手してやる時点で意外に優しいと評価することも出来なくはない。

年配者達は心底横島が羨ましかった。

ちなみにこの日の二人の戦いの結末は先程からこれ見よがしにタマモを抱き抱えて親しげな姿を見せつけるアナスタシアに、タマモがあまりなつかない女性は悔しそうにしながら帰って行きアナスタシアの圧勝だった。

そして最後には今一つ事情を理解してないタマモと一緒に勝利の高笑いをしているのも何時ものことである。


「本当そういうんじゃないんっすけどね。」

一方元カノで今も深い関係が続いていると勝手に誤解され、誰も自分の言葉を聞いてくれないことに横島は諦めたようにため息をこぼして仕事に戻っていく。

別にアナスタシアが嫌いとかそうではないが噂が噂を呼び自分の言葉を信じてくれないのはやはり少しは悲しいらしい。


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