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その二

「そうだったの……、忠夫はアパートに住んでないようだったけど、まさかあなたと一緒に住んでるの?」

一瞬無言だった百合子は再び魔鈴に横島の近況を尋ねるが、先程まで笑顔だった表情が微妙に変化していた

別に険悪になった訳では無いが、その表情は真剣味が増している


「はい、私の自宅に住んでますよ。 タマモちゃんとシロちゃんも一緒です」

百合子の表情が真剣になるにつれて魔鈴は緊張感が高まっていくが、表面上はなんとか笑顔を保っていた

仕事上の関係よりも息子の恋人として見る分、百合子の目線が厳しくなっているが魔鈴はある程度想定していたようだ


「少し安易過ぎないかしら? 忠夫は高校生よ」

高校生の横島と同棲している魔鈴に、百合子は若干不快そうな表情を浮かべる

付き合う事などは悪いとは言わないが、未成年の横島と簡単に同棲した魔鈴に常識的に少し問題ではないかと思っていたのだ


「おっしゃる事は理解しておりますが、私と横島さんでしっかり考えた末の事です」

魔鈴は笑顔できちんと考えた末の判断だと言うが、内心は別である


(元々はお義母さんの強引過ぎるやり方が問題の始まりなのですがね……)

一人暮らしどころか料理もまるで出来ない横島を安易に一人暮らしさせた百合子が、元々の問題だと魔鈴は思うが口にはしなかった

この時点で百合子と対立しても魔鈴には何の得も無いし、息子の教育の失敗を第三者に指摘されるなどすれば母親のプライドがどれだけ傷つくかわからない

これから長い付き合いになる相手なだけに、魔鈴としてはあくまで下手に出るしか方法が無いのだ



「ただいま~」

そんな時横島が帰って来るが、事務所に入るなりその微妙な空気に思わず入るのをやめたくなってしまう


「久しぶりだね、忠夫」

そんな横島に笑顔で話し掛けた百合子は、横島がどんな反応をするのかをじっと見つめている


「突然来るなよ、おふくろ。 何か用か?」

百合子を見て驚いた表情をした横島は迷惑そうに答えた

来る事は知らないはずだからわざと驚いた表情をした横島だが、後は特に演技もしてない

これも事前に話し合った結果であり、百合子に対しては演技などは通用しないという結論からである


「おまえ…… 母さんね、父さんと別れて来たのよ。 これからは一緒に暮らせるわ」

迷惑そうな横島に何か違和感を感じた百合子だが、当初の予定通りに話を進める事にしていた


(理由が未来と同じだな…)

一方時期や行動は微妙に違うが未来の時と同じ理由に、横島は内心ため息をはく

過去のこの時点の横島が信頼されるはずがないのは今の横島なら理解できるが、だからと言って好き勝手に引っ掻き回されるのは面白い事ではない

未来ではアシュタロス戦後は魔鈴の存在もあり、横島に対しては強引な手段はあまりとらなくなったが、この時点の百合子には遠慮が無いだろう

横島はそんな百合子が何をするのか考えると気が重かった
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