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白き狼と白き狐と横島

ところ変わって魔鈴の店では周りの動きとは無縁なほど、いつもと同じ平和な日常に戻っていた

タマモやシロや愛子の今後や未来については、多少話はするものの取り立てて何か決まった事はない


そして西条や美智恵の問題は、百合子に任せたままになっている

横島としては西条を疑う気持ちは変わらないが、美智恵や西条が優秀な事をよく知るだけに自分から簡単に動く事が出来ないでいた

それに加え百合子が美智恵に対しては露骨なほど怒りや不快感を見せているため、横島が手出し出来ないとも言える

やはり横島は百合子に対しては強く言えないままだった



「弁当と言えば、やっぱり牛丼がいいだろ?」

「馬鹿ね~ 別に弁当屋になる訳じゃないのよ? メニューにない牛丼をわざわざ作るなんて手間がかかるだけよ」

その日店の厨房では魔鈴と横島達が、持ち帰り用の弁当の種類や販売個数について話し合っていた

サンドイッチといなり寿司が予想以上に好評なのを受けて、持ち帰り用のお弁当の販売を拡大しようと検討してたのであいる


「ならば焼肉はどうでござるか? 牛丼より簡単でござるが……」

横島の提案した牛丼がタマモにより手間がかかると否定されると、シロは焼肉がいいと言い出していた

横島とシロにとっては、基本的に弁当=肉なのかもしれない


「一応魔法料理なので、牛丼や焼肉はちょっと…… レパートリーにありませんし……」

基本的に魔法料理が売りの魔鈴の店は、店に出す料理は多少なりとも魔法の効果がある

それは人がわかるように影響するほど効果がある訳ではないが、普通の料理よりは多少体力が回復したり元気になったりするのだ

魔鈴の得意料理は西洋系の多国籍料理であり、牛丼や焼肉は作れない訳ではないが店に出すほど自信はない


「冷めても美味しい弁当って、結構限られてるんだよな~ アパートの頃は電子レンジがなかったから、よく冷めた弁当食べてたな」

弁当といえばスーパーの弁当やコンビニの弁当を思い出す横島は、冷めても美味しい弁当が以外と少ないと感じていた

基本的に店で温めてくれるが冷めるのが早いから、アパートに戻る頃には微妙な温かさだったのだ


「やっぱり店のメニューからアレンジする方がいいと思うわよ。 店のイメージとかも関係するしね」

手間やコストを考えると、今あるメニューを元に作った方がいいとタマモは言う

それに横島やシロの要望を取り入れると、魔鈴らしさが無くなるとも考えたようだ


「そうですね。 メニューにある料理を、冷めても美味しいというのはいいでしょうね。 少し考えてみますね」

横島達三人の意見を聞き、アイデアが出たのか魔鈴はさっそく試作品を作り始める

その後も客の少ない時間を利用して、魔鈴によるお弁当用料理の試作は続いて行った


「美味いっす!」

「美味しいでござる!」

自分から味見をすると言い出した横島とシロだが、基本的に何を食べても答えは似たり寄ったりである

実際にメニューにある料理をアレンジする程度なので、美味しくて当然ではあるのだが……

まあ二人の意見はあまり役に立ってないが、それでも魔鈴の機嫌は終始良かった

元々一人でメニューを考えていただけに、賑やかにメニューを考えるのが楽しいようである


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