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二年目の春・6

「ひつまぶしですか?」

その日の夜は明日菜と試食をした後に少し改良した鳥のひつまぶしであった。

一度目は鶏肉の歯応えがひつまぶしにしては少し気になったので、夕食にと作ったのは鶏肉を蒸してから直火で焦げ目を軽く付けたものになる。

今回は鶏肉の味付けを甘辛目にしていてきざみ海苔とネギにワサビも試しに薬味にしていた。

出汁は鰹節と昆布で取っていて割とオーソドックスな味付けになっている。


「いい匂いだね。」

「いただきまーす! うおっ! 香ばしいのに肉が柔らかくて美味しい。 それにこの甘辛なタレがご飯によく合う!」

麻帆良祭のメニューの試作品と説明をする横島であるが、何人かはそんなこと関係ないとばかりにおひつから鳥のひつまぶしをお茶碗に盛り食べ始める。

特に食いしん坊と化した桜子は我先にとかきこむように味わうが、味付けをオーソドックスにした分だけ慣れ親しんだ味であり何より鳥の旨味と甘辛のタレは白いご飯に良く合う。

一応お茶碗二杯分を一人一人のおひつに入れているが早くも足りなくなりそうな雰囲気だった。


「味と具材は要研究ってとこだけどな。 これなら超包子でも中華風ひつまぶしとか作れそうだしいいかと思ってさ。」

「難易度的には昨年の麻帆良カレーと大差ないでしょうか?」

「乗せる具次第だけどみんなでも出来るだろ。 もしかしたら牛肉とか豚肉を煮込んだ物にすればもっと簡単になるかも。 今日は鶏肉しかなかったから鳥ひつまぶしにしたけど。」

一方木乃香達やあやかなどはゆっくり味わいつつ麻帆良祭で出す場合を考えて実現可能かと話をしていくも、ひつまぶしというとうなぎをイメージするので難しそうであるが具材を変えると結構お手軽料理となると知ると反対意見は今のところ出てない。

要はご飯に具材を乗せた物に薬味や出汁などをかけるとひつまぶしになるので、おひつに入ったちょっと高級感ある見た目に反して簡単である。


「なんというか、有りそうであまり見ない料理ですわね。」

具体的なメニューはこれからだが、何処にでも有りそうながらあまり見ない料理は麻帆良祭のメニューには最適だろうと少女達も太鼓判を押す。

あまり奇をてらい過ぎてもダメだが、やはり同じ料理よりは一工夫欲しいのが実情なのだ。

あやかや千鶴のように外食に慣れてる面々ならば完全に見たことがない訳ではないようだが、中学生の少女達に作れて類似する競合料理が少ないなどインパクトや味も悪くない料理となるとなかなか難しい。

何より立体影像などアトラクション性があるので半端な料理では色物扱いになってしまう。


「まあ、候補の一つと考えてみたらどうだ? ダメならまた考えるからさ。」

まあ具体的なメニューの開発や値段に立体影像などとの兼ね合いなどまだまだ考えるべきことはあるが、メインの有力候補であることは確かだった。

横島からするとちょっとした小細工をするような感覚であり、ダメなら他のを考えるからとあっさりとしていたが。


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