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二年目の春・6

「なんとか形になってきたわね。」

同じ頃地下室では美砂達三人は麻帆良祭に向けて楽器の練習をしていた。

麻帆良祭まで残り一ヶ月となる現状でようやくみんなで合わせて楽器を弾いて形になりつつあり、まだミスも多いが本番には間に合わせたいとやる気を出している。

放課後や夕食後に熱心に練習をしていたし横島も暇な時は教えていたので期間は短いがなんとか間に合いそうであった。

なお楽器のパートは本人達で決めていて、美砂がギターで円がベースで桜子がドラムになっている。

タマモに関してはギターを練習しているが難しい演奏が出来るわけではないので間奏の間にでもタマモの見せ場を作ることにしていた。


「あとはマスターがボーカル引き受けてくれればね~。」

「結構臆病なのよね。」

最後に横島だが、実は美砂達が楽器ではなく意外に上手いボーカルをやらせたいと言っているものの流石に自分じゃ力不足だからと本人が難色を示している。

その結果最終的には誰かが間に合わない場合に横島にその楽器をやってもらうことにしているが、ボーカルは美砂達の誰かにするか横島にするかでまだ決まってないのだ。

横島とすれば手伝いで参加するくらいならばいいが、流石にメインを張るのは躊躇するらしい。

元々自分は嫌われものだったとの認識が今も根深い横島とすれば、華々しいステージで歌うなんてムリだとの認識のようである。


「ボーカルはイケメンがするもんだっていうのって、マスターの偏見よね。」

横島がボーカルを拒否する理由にはバンドのボーカルはイケメンがやるもんだとの謎の理由もあり、別に学園祭でやるだけだから気にしなくていいと言っても本人が納得しないのだ。

実は楽器や料理と違い、歌だけは本来の横島のままの実力なので自信なんて全くないことも地味に影響していたりするが。

借り物の能力や技術で生きてるだけに本来の横島自身の実力には全く自信がないらしい。


「でも本人が嫌だっていうなら仕方ないじゃない。」

まあ美砂達も別にこのままバンドでメジャーデビューをめざして芸能界入りなんて考えてもないので、どうしても横島が嫌なら自分達の誰かをボーカルにして横島に代わりに楽器を演奏してもらうことでいいとも考えている。

横島が居ない本来の歴史ではそんな夢もちょっとはあったのかもしれないが、ここの美砂達はすでに魔法を知り横島の秘密を共有するだけに今の生活が気に入っていて下手に有名人なんかになりたいとは思ってない。

もちろん彼女達がバンドでデビューなんて簡単に出来るほど現実は甘くはないのだが。

ただこうして自分達で楽器を弾き歌ったりするのは楽しいので趣味程度で続けられたらとは考えていたりもする。


「あとはバンド名よね~。」

「マスターはネーミングセンスだけはダメだから相談出来ないしどうしよっか。」

そして彼女達のバンド名に関してはまだ決まってない。

普通はみんなで話し合うのだろうが横島の場合、ネーミングセンスがイマイチなのは異空間アジトに行って理解してるのでそれだけは自分達とタマモで決めようかと話していた。


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