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その二

その後もGSとしての横島の活動状況の説明を受ける百合子だが、やはり横島の変わりように納得がいく答えはないままだった


「そういえば、忠夫と一緒に映画に出演されましたよね? あれもGSの仕事なのですか?」

ずっと魔鈴に話の主導権を握られっぱなしだった百合子だが、確証を求めて映画の話を持ち出す


「ええ、あれも仕事のうちですよ。 別件の仕事で香港に行った時に頂いた依頼です。 最初は映画に実際の霊能力を使いたいとの依頼で、スタントや脇役での出演のはずだったのですが、監督さんの意向により主役級になったんです」

百合子の疑問に魔鈴は、少し恥ずかしそうな笑みを浮かべて事情を説明していく

今思い出してみれば少し迂闊だったと思う魔鈴だが、あの時点で映画が大ヒットするとは予想出来なかった

未来と同じ行動をしたはずなのに結果がまるで違う

結果的に考えてみれば、かなり重要なポイントだったと思うのは最近である


「そうですか。 失礼ですが魔鈴さんと忠夫の関係は……」

気になっていた映画の件が特に問題も無いため、百合子はいよいよ横島の変化の核心に迫ろうとしていた


「関係と言いますと個人的な関係ですか? 仕事以外では正式にお付き合いさせて頂いてます」

魔鈴の反応を見る為にわざと言葉を濁した百合子だったが、魔鈴はあっさりと恋人だと宣言してしまう


「えっ……」

「申し訳ありません。 始めにお伝えするべきかとも思ったんですが、最低限の公私の区別は必要かと思いまして」

思わず驚きの声を上げた百合子に、魔鈴は公私の区別のために話さなかったと告げる


(この子、本当に何者?)

百合子は返す言葉を考えながら魔鈴をじっと見つめていた

まるで自分の考えが読まれているような魔鈴の対応に、百合子には感心と警戒心の両方があり複雑な気分である


(なんとか上手く話せましたね)

一方端から見れば主導権を握って見事に話を進めているように見えた魔鈴だったが、本人は全く余裕が無い状態だった

それと言うのも、魔鈴に世渡り術や人との交渉術や社会的な知恵などを教えたのは他ならぬ未来の百合子なのだ

百合子に教わった方法で百合子と渡り合っているのだから、余裕などあるはずがない


(不思議なものね…… 未来で魔鈴さんや私達の一番の理解者だった人とこんな形で出会うなんて)

一方挨拶した後は静かに話を聞いていたタマモは、過去に戻った複雑さを改めて感じている


未来において魔鈴と百合子は本当の親子のような関係を築いていた

そしてタマモやシロや愛子など妖怪達にも分け隔て無く接して、人間の常識や人間社会で生きる知恵などを教えていたのだ

時には強引過ぎるやり方もあり横島はあまり好きでは無い時もあったようだが、魔鈴やタマモ達の後ろ盾として未来での平和な暮らしを影から守っていたのをタマモは知っている


(まあ、魔鈴さんなら大丈夫だろうけど……)

百合子への対応は難しいが、タマモは自分が心配するほどの事も無いと思う

横島を変えるきっかけを与えたのがルシオラだとするなら、導き成長させたのは魔鈴である

そんな魔鈴と横島を見れば、百合子も理解してくれると考えていた

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