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二年目の春・6

「テオドラ様が麻帆良に……。」

「まだ本決まりではないがの。 関西と政府にも話を通さねばならん。 何と言っても魔法世界を二分する大国の皇女だからのう。」

そして少女達や勉強していた常連と入れ替わるように近右衛門が高畑と刀子を連れて店を訪れると、横島や高畑や刀子に対してテオドラの麻帆良訪問の話が来たことを明かしていた。

事は近右衛門単独で決めれることではなく、すでに関西の詠春には連絡したし関東の幹部クラスにも明日の朝一で伝える手はずになっている。

加えて魔法世界の大国の皇女が来日するとなれば、日本政府もかやの外に置くわけにはいかなく話を通して最低限のバックアップをしてもらう必要があった。

なお現時点で日本の法律は魔法世界の存在を想定してなく魔法協会に外交権があるかどうか明確にしてない。

魔法協会の自衛権はメガロメセンブリアと地球側国家の結んだ条約により認められているが、そこに外交権に関するものはなくいわゆるグレーゾーンである。

メガロメセンブリアとしては魔法使いの弾圧を牽制する意味と妖魔などの闇の存在との戦いを理由に自衛権は認めさせたが、自分達の下部組織だと主張するだけに外交権なんて認めてない。

ただメガロメセンブリアを自分達の上位組織だと認めてない魔法協会が勝手に魔法協会同士や魔法世界と交流しているのが現状で、ヘラス帝国とアリアドネーに関しては公式には地球側魔法協会の外交権に関してはあるともないとも言ってない。

事実上地球側魔法協会を国家待遇で扱ってはいるが国家と認めた訳でも外交権を認めた訳でもない。

これに関しては地球側国家と魔法協会の関係が国により様々であることや、元々地球側の欧米はメガロメセンブリアとの関係が少なからずあるなど複雑な二つの世界の国際情勢が絡み一概に決めれることではなかった。

ちなみにメガロメセンブリアに関しては正式に地球側国家との国交はないが欧米を中心に外交チャンネルはあり日本にも一応連絡を受ける窓口はあった。

実は二十年前の関東魔法協会の独立の際には抗議が来たりもしたが国交がない以上は交流もないし、独立も形としては正式な手続きを踏んでいたのでそれ以上何もなかったが。

そもそも日本政府としては魔法世界と魔法協会の複雑な関係や魔法世界の情勢をほとんど把握してなく、かつての魔女狩りなどの教訓から現在地球側で行われている魔法と政治の分離という建前を馬鹿正直に守っているので魔法協会には関与しないという姿勢を貫いている。

少し話が逸れたがそれはそれとして、魔法世界の大国の皇女が日本を初めて訪問するのに政府が知りませんという訳にはいかない。

無論秘匿されてる魔法世界の皇女なだけに公式訪問には出来ないが、日本として恥をかかないだけの受け入れ準備はしなくてはならないし将来魔法が公開されて国交を樹立する可能性だってゼロではないのだ。

形としては恐らく非公式の私的な訪問となるだろうが、それでもここで政府を除け者にすれば今度は日本政府と魔法協会との間に波風が立つ。

実質的には魔法協会が仕切り動くのだろうが花を持たせる必要はあった。


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