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二年目の春・6

「それでここがこうなるんだが分かるか?」

「うーん、なんとなく。」

さてこの日の店もまた夕食を挟んて勉強会となっていて横島を始め何人かが教える側に回ったり学生同士で教え合ったりしているが、難題であるまき絵は正直あまり成果が出てない。

一言で言えば興味がない勉強を無理に覚えようとしてもまき絵のようなタイプはなかなか覚えられないだけだが、元々は同じく決してデキのいいタイプではなかった横島は時間がかかっても嫌な顔一つせずに根気よく教えている。

まあ相手が自分に好意を持つ美少女ということもかなり含んでの結果だろうが。


「なんとなくでも分かれば十分だ。 忘れたらまた教えるからな。」

「えへへ、ごめんね。 バカで。」

「自分で自分にバカっていうのはあかんな。 まき絵ちゃんは勉強に興味がないからやり方もあんまり知らんだけだよ。 本気になればもっと出来るぞ。」

横島の場合はかつての自分を思い出すからか明日菜やまき絵のように成績に苦労する少女にかなり熱心に教えていて、特に二人のように自分でバカだと語る少女にはそれを否定してやれば出来ると言い聞かせる。

特別な力は何一つ使ってないが明日菜の成績を上げたのが横島なのは周知の事実であり行動が伴うと説得力がまるで違う。

加えて教師でも仕事でもない横島が、店の仕事を放り出してまであまりデキの良くない少女達に親身になる姿は確実に好感度を上げていた。

正直なところ明日菜が横島に惚れたのもそんな過程があってのことであるし、惚れるとまではいかなくても好意を持つ人間がお客さんに増える大きな一因だったりする。


「あーあ、嬉しそうな顔しちゃって。」

「こういうとアレだけどさ。 あんまりイケメン過ぎるとこっちも緊張するけどマスターってちょうどいいのよね。」

この日もまき絵は勉強を自分なりに頑張っているが横島が熱心に教え過ぎていることが、少し勉強の邪魔になってる気がしないでもない。

馬鹿だ馬鹿だと言われることの多いまき絵なんかは横島のように本気でやれば出来ると言い切ってくれる相手はそれだけで嬉しいし、何より自分を真っ直ぐに見て理解してくれることが嬉しくてしょうがない感じもあった。

割と古参の女子高生なんかはまた一人横島の毒牙にかかったと少しからかうようにまき絵の現状を語るが、あながち間違いでないので否定する声はない。

正直周りにいる女性が次々と惚れていく姿は見ていて恐ろしいものもあり、それなりに恋愛経験のある女子高生からすると本当の女ったらしはああいうタイプなのかもしれないと思うほどだ。


「でも手を出さない以上悪いことじゃないんだよね。」

「生殺しとも言うけど。」

「自覚がないだけにタチが悪い。」

彼女達も横島を評価してるし好感も持ってるが、同時に横島ほどタチが悪い男も珍しいとも感じていた。

決して悪いことをしてる訳ではないしいい人なんだが、惚れさせるだけ惚れさせておいて特別な存在になれないのは女子の側からすると辛いものもある。

まあ周りの惚れてる少女達が幸せそうなので外野からとやかく言う気はないが、いつか血を見るのではと少し心配もしていた。

あくまでも横島が一般の男性ならばという見方であるが。



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