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その二

その頃学校で授業を受けていた横島の元には、百合子が事務所に現れた連絡が行っていた


(やっぱり早く来たか…)

美衣からの緊急メールで事実を知った横島は、少し複雑そうな表情を浮かべる

今までの歴史の変わりようから考えて、百合子が来る時期もかなり変わる可能性を横島達は少し前から考えていたのだ

突然の百合子の訪問を横島や魔鈴が驚かないのは、その為なのだが…


(またろくでもない事考えてるな)

正直、横島は百合子をあまり好きではなかった

その高いプライドから基本的に自分が常に正しいと決め付けており、横島の話を全く聞かない

百合子が社会的に立派な人間なのは認めるが、自分の価値観や考えを押し付ける癖がある

その上自分の思い通りにならないと力押しで無理矢理思い通りにしようとする事などは、どこか令子を思い出すのだ


(あの二人どっか似てるんだよなぁ。 味方になればあれほど頼もしい人は居ないけど、関係が近すぎると毒になる時がある)

未来ではアシュタロス戦後に美神親子との対決の際に和解しているが、根本的な価値観の違いは相変わらずだった
 
あの時の百合子の行動には今でも感謝しているが、一方で自分の知らないとこで勝手に行動する百合子を疎ましくも思っている


(めぐみに任せれば大丈夫か…)

正直横島としては現状ではあまり関わるつもりはなく、ある程度ごまかして帰ってほしい

そのため魔鈴に細かな対応を任せるつもりだった



一方事務所ではタマモやシロやケイなどが、百合子との挨拶を済ませていた


「美衣さんも含めて彼女達は妖怪ですが、それぞれが事情があって今は一緒に暮らしてます。 後はもう二人ばかり居るのですが、今は外出してます」

事務所の現状を説明していく魔鈴の話を、百合子は動じる事無く聞いていた

事前に知っていたとはいえ、タマモ達が妖怪だと知っても顔色一つ変えなかったのはさすがだろう


「忠夫はしっかりGSをやれてるのですか?」

「もちろんですよ。 形の上では私が事務所の代表を勤めてますが、実質は横島さんともう一人のカオスさんとの共同経営です」

横島の現状に納得がいかない百合子が横島の勤務状況を尋ねるが、魔鈴は素直に現状を話していた

可能な限りは嘘を付きたくないし、下手な嘘が通用しないのは百も承知である


「忠夫が共同経営って、そんなまさか…」

今までは表面上にこやかな笑顔で動じなかった百合子が、始めて驚きの表情を浮かべていた

事前の調査でもわからなかった新事実な上、横島が共同経営などとは信じられないようである


「GS業界は実力の世界ですから、珍しくはありませんよ。 まあ、未成年の学生ですから公式には社員扱いですけどね」

笑顔で説明する魔鈴を百合子は真剣な表情で見つめていたが、内心はあまり面白く無かった


(一体この子なんなの…?)

百合子には魔鈴の言動から、絶対的な信頼と愛情がハッキリと伝わってくる

その揺るぎ無い信頼と愛情は、並の恋人と比べものにならないのは明らかだった


百合子は事前に魔鈴の事を調べており、GSとしての実力や事務所の経営能力は十分評価している

しかし未熟でダメな横島を好きになった事で、どこか内面をナメて考えていたのだ

そしてナメていた分だけ、魔鈴に対しての驚きが大きい


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