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二年目の春・6

「お疲れさまでした。 今日の分は終わりですわ。」

「終わった!」

その後横島とあやかのスポンサー訪問は五件ほど回ると終わるが、結局なんだかんだと時間は夕方になっていた。

それほど苦痛という訳ではないがあまり経験のないスポンサーとの挨拶に横島は気疲れしたのか、終わったと聞くと両手を上げて喜ぶ。


「もう少し楽にしてもよかったのですが。」

「俺ってさ、元々社会的には底辺中の底辺だったからなぁ。 ゴキブリみたいな感じか。」

最後の訪問先を終えた横島は気晴らしにとあやかを連れて麻帆良湖畔公園に来て少し散歩していたが、あやかは思っていた以上に横島が少し気を使い過ぎてることに対しもう少し楽にしてもいいとアドバイスするも横島はなかなか難しいと苦笑いを浮かべた。

あやか自身ばかりではなく訪問先の人もまた横島が少し気を使い過ぎではと感じて楽にしてと言った人も居たが、横島にはそこでじゃあと楽には出来なかった。

まあ好感を与えたことは間違いないし、見た目に若い横島があまり楽な態度だといい印象を与えぬ場合も多々あるので間違っていた訳ではないが。

しかしまあ力関係で上位に居る横島が気を使い過ぎると相手も気を使い過ぎるので、もう少し楽にして欲しいのがあやかにはあった。


「ゴッ、ゴキブリですか? それは流石に……。」

「冗談じゃないんだよな。 これが。」

ただ横島はそんなあやかにかつての自身をゴキブリに例えるが、流石に例えがよろしくないようであやかは引きつった表情を浮かべる。


「ゴキブリにも五分の魂ってところか。 俺自身が実体験してるからな。 怖いんだよ。 人を侮るのが。」

ただ横島は決して冗談ではなく真剣であり、底辺のゴキブリ野郎が生き残り強くて恐ろしい相手が次々に侮り死んでいったのを忘れたことなどない。

かつて馬鹿にしていたクラスメートなんかもその後に苦労した奴が居たのを噂で聞いたが、手を差し伸べる気なんて更々なくその後どうなったのかさえ横島は知らない。


「しかし現実問題として今の横島さんに仇をなすことの出来る人など……。」

「居るんだって。 何処にでも。 あやかちゃんも覚えておいた方がいい。 人の可能性って怖いんだぞ。」

相変わらず自身をゴキブリに例える横島にあやかは眉をひそめるが、そんな雪広家という財閥の家に生まれ相応の教育を受けたあやかですら横島の言葉は神経質過ぎるというか臆病すぎるのではと思う。


「超さんのことも?」

「今の超さんが即危険って訳じゃないけど、彼女は現実的な可能性として俺達の脅威になり得るからな。 時間移動ってのはそんだけ危険なんだ。」

力や強さは直接的にしろ間接的にしろ相応のプライドや自信があるものだが、横島にはそんなものはほとんどない。

その原因をあやかは想像は出来ても真の意味で理解するのはまだ難しいようだ。

しかし横島が超鈴音に対してどう考えてるかは理解していたようであった。



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