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二年目の春・6

一方この日の店では夕映と明日菜の二人が夕食の支度を手伝っていた。


「そうだな、いい感じだな。」

例によって二人に料理を教えながらの夕食の支度となるが横島は元より夕映と明日菜も楽しんで教わっている。

いつの間にかすっかり周りに女性が増え桜子や美砂が横島に抱きつくのを見てるだけの二人にとって、料理を教わる時間は横島を独占出来てふれ合えることが喜びとなっていた。

無論自分だけが特別な存在になりたいという気持ちが全く無くなった訳ではないが、それ以前に美砂や桜子には言えないものの気軽に抱きついている二人や最近ではまき絵が羨ましいという気持ちの方が日増しに強まっている。

ぶっちゃけると同じ立場のはずなのにという不公平感が少し出てきていた。

一度や二度ならいざ知らずしょっちゅう抱きつき裸での混浴まで済ませた桜子に対する嫉妬が二人のみならず他の少女達には生まれている。

まあ木乃香や明日菜達も横島とは深く強い絆を持つが故に、美砂や桜子は羨ましいと感じているだろうが。


「ん? どうした? ああ、それか。」

そして以前から気付いていたことだが料理を教える時の横島は距離感がいつもより近く、時には手を取りやり方を覚えさせることがあるので体が密着に近い距離になることもあった。

夕映や明日菜にのどかなんかは随分そんな機会があるが未だに慣れずに顔を赤らめることもある。

女性とは違う大人の男性の力強さと密着した時の包まれるような安堵感に木乃香達四人は胸を高鳴らせてしまうようなのだ。

この日も魚を捌いていたものの未だに難易度が高く二人は手取り足取り密着しながら教わっていて、二人は若干顔が赤いが横島はその表情には気付いても意味には気付けてない。

男である自分に触られて恥ずかしいのだろうと勝手に誤解しているだけであり、それを理解する二人は思わず顔を見合わせて困った人だとクスッと笑ってしまう。


「あっ!? マスターが明日菜に抱きついてる!」

「違うわ! 包丁の使い方を教えてるだけだ!」

そんな時まき絵が学校から帰ってきて厨房に顔を出すと横島は明日菜の後ろに着いて包丁の使い方を教えてるが、まき絵は勘違いしたのか大きな声で明日菜に抱きついてると騒ぎ騒動になる。

フロアから美砂達やタマモも何事かと来てしまい横島はやらしい気持ちはなく無実を訴えるも、満更でもない明日菜のちょっと恥ずかしげな表情からおおよその事態を察する。


「そう騒がないの。 明日菜達はとっくにマスターのモノなんだから。 ちょっと抱きつくくらいいいじゃん。」

「おいこら! 人聞きの悪いこというなっつうの。」

後から駆けつけた美砂は目の前の横島と明日菜と夕映の深い絆を感じる表情に少し嫉妬してしまうが、同時に明日菜達が確実に横島を男として意識して自分の気持ちをきちんと自覚していることにホッとしてもいた。

横島は相変わらずだが横島と一番関係が深い木乃香達の変化は美砂自身を含めた横島包囲網としては大きな前進であり、同じ家族でも親子や兄妹のような関係に落ち着く可能性があった木乃香達には大きな変化である。


「マスターも手を出すのは構わないけど、ちゃんと責任取んないとダメよ。」

「あのなぁ。 俺は誰にも手を出してなんか……。」

どうせ人の寿命と人生を逸脱するならば仲間は多くても構わないと考える美砂だが、今一つ自分の行動の結果を認識してない横島には一言釘を刺すのも忘れない。

横島自身はそれを別の意味で受けとるが美砂が言いたいのは精神的なものになる。


しかし美砂は知らなかった。

横島という男は前世から女を惚れさせることはしてもそれ以上の責任を取ったことがない男であることに。

今生でも多くの女性が横島に惚れながら待たされていた事実など知るよしもないことである。

ある意味前世から一切学習してない男であった。


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