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二年目の春・6

「持って行ってええの?」

「おう、持ってけ。」

その後まき絵には少し危なっかしいところはあったが、最低限の秘密は守れるようで関係する少女達はホッとする。

そしてこの日の放課後になると木乃香は店の厨房にて、京都の実家へ瞬間移動による帰省のためにと食材を詰めたクーラーボックスを横島から受け取っていた。

麻帆良から京都の実家はその気になれば新幹線ですぐであるが移動費も馬鹿にならないし大変である事に代わりはない。

その点瞬間移動ならば楽であり地球時間で昨日行った美砂の誕生パーティの料理を作る際に、木乃香が珍しく頼んだ実家の帰省が金曜である今日することにしたようだった。


「忘れものないか?」

「大丈夫や。」

クーラーボックスを受け取った木乃香は一旦店を出て二階のリビングで、ハニワ兵やチャチャゼロと遊びながらしばらく待つと店の仕事の合間に横島も二階にあがってくる。

瞬間移動とはいえ店や女子寮では入ったはずの木乃香が消えるとおかしいと気付く人が居てはダメなので、瞬間移動は横島の自宅から直接京都の実家に移動することにしていた。


「お~、スゲーな。 個人の家だとは思えん。」

横島宅の玄関から京都の近衛邸まで瞬間移動なら一瞬である。

近衛邸は関西呪術協会の本山であるため比較的強力な結界があるので横島は結界のない門の前に転移したが、近衛邸は雪広邸とは異なる純和風の作りながら個人の邸宅というよりは重要文化財とでも言われた方がしっくりくる外観だった。


「ありがとうや。」

「ああ、帰ってくる時に連絡してくれ。」

近衛邸の入り口には門番が居るようで目の前に突然現れた横島と木乃香に少し驚くも、 一応話は通っているようでおかえりなさいませと声をかけてくる。

横島は木乃香に一言かけると門番に軽く会釈をして再びその場から姿を消して麻帆良に戻っていた。


「ただいま!」

「おかえり木乃香。 凄い荷物ね。」

「今日の夕飯楽しみにしててや。」

近衛邸もまた雪広邸同様に門から屋敷までが長かった。

木乃香は正月以来なのでおよそ四ヶ月ぶりの帰省であったが、屋敷の玄関で出迎えた母と巫女さん達に笑顔で挨拶をするとさっそく近衛邸の厨房に向かう。

屋敷の大きさに合わせるように近衛邸の厨房は広く横島の店よりも広いが、どちらかといえば勝手場とかお勝手とでも言う方が似合う場所で昔は土間だったところである。

実は第二次大戦後まもなくまでは土間のままであり魔法にて煮炊きをしていたなんて歴史もあるが、ガスや電化製品が普及した先代の頃に改築されたので現在は広くはあるが一般的な業務用の厨房とほとんど変わらない。

以前にもちらりと話したが京都の近衛邸は本山でもあるので常にそれなりの人が奉公するような形で常駐しているが、報酬はお世辞にもいいとは言えずその代わりという訳ではないが住む場所と三食は近衛家が提供するという慣例が昔からある。


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