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その二

職場体験より数日後、魔鈴事務所には意外な人物が訪れていた


「始めまして、ジャパンテレビの駒井です」

わざわざ菓子折りを持って事務所にやって来たのは、先日横島が会った踊るGSのプロデューサーである


「先日はうちの横島がお世話になりました」

修学旅行の一件のお礼を言う魔鈴に、プロデューサーは恐縮したような笑顔を浮かべた


(何かありますね…)

必要以上に低姿勢なプロデューサーに魔鈴は、裏があると悟るが素知らぬふりをして応対する


「あの…… 実は、もう一度だけ踊るGSに出演して頂けないかと思いまして……」

笑顔で様子を伺う魔鈴に、プロデューサーは言いにくそうにドラマのオファーをした


「いや、こちらがテレビ出演などを一切しない方針なのは理解してます。 ですが当方としても、あちこちからもう一度出演させるように注文が来てまして…」

何も返事をしない魔鈴に、プロデューサーは困ったように話をしていく

肝心な部分はあまり詳しく語ろうとしないが、どうやらプロデューサーもあちこちから圧力や要望があったようで、貧乏くじを引いて来たらしい


(来るような気はしてたんですよね…)

魔鈴は表情を変えないまま静かに考え込む

修学旅行の出演は横島のミスで仕方なかったと理解しているが、例外を作ってしまった以上はまた出演依頼が増えるのは予想出来ていた

事実、テレビの出演依頼やイベントの招待状は最近でも良く来るのだ

そして踊るGSのドラマも未来以上の視聴率に、また依頼が来るような気がしていた


(問題は銀一さんなんですよね)

横島の親友の一人であり未来では魔鈴も友人だった銀一が絡んでなければ、決して受ける依頼ではない


「とりあえず今日はお帰り下さい。 横島は今学校ですし、返答は後日します」

魔鈴の返事を緊張気味に待つプロデューサーは、この場で断られなかった事に安堵していた

ダメなのは始めからわかっているのだが、即答で拒否されると責任問題になるのだ


「では、よろしくお願いします」

プロデューサーは出演の依頼書を置いて帰っていくが、その表情は最悪の結果が免れた安堵感でいっぱいだった


「踊るGSですか…」

置いて行った依頼書に目を通す魔鈴、そこにはピートや愛子や加奈の名前もあるが、一番驚いたのは魔鈴自身の名前もある事である


「これは……」

横島やピートや愛子達はともかく、以前は出演してない魔鈴にもセットで出演依頼が来るとは思わなかった


(詳しく話を聞かなかったのは私ですが、まさか私にまで出演依頼が来るとは…)

横島と魔鈴がセットで出演依頼や招待状が来るのは良くあることであるが、今回の件は魔鈴が関わってないため少し意外だった


(さて… どうしましょうか)

心情的には銀一に協力したい魔鈴だったが、これ以上例外は作りたくない

結局魔鈴は、横島が帰って来てから相談する事にした



「久しぶりに帰って来たけど、日本は相変わらずね~」

同じ日、成田に到着した飛行機から一人の女性が降りて来た

慌ただしい日本に軽い懐かしさ感じているのは、横島百合子である


「魔鈴めぐみ… どんな人物かしらね」

意味深な笑みを浮かべる百合子は、荷物を受け取ると一人で都内に消えていく
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