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その二

それから横島は見習い料理人に交じって簡単な作業を手伝っていく

途中で料理長も気が付くのだが、人手不足な事やプロと同じ手際の良さに黙認していた


「やっぱり横島君って普通じゃないわよね」

いつの間にかプロの料理人に交じっている横島を見つめて、愛子はボソッとつぶやく

いつも一緒に勉強しているはずなのに、未だに横島には驚かされる事ばかりなのだ


「GSで人気があって、料理が上手い。 魔鈴さんは大変そうよね~」

クラスメートの一人は、ふと横島の彼女は楽じゃないと感じる

これだけ有名な横島では浮気の心配もあるし、何より女としては横島より美味しい料理を作らなければならない

いろいろ気苦労が堪えない上に、料理まで高いレベルを求められたる彼女は大変だと思う


「ところが、魔鈴さんがまた凄いのよね~ 横島君に輪をかけて凄いのよ」

修学旅行で魔鈴と親しくなって以来何度か事務所に遊びに行っている愛子は、横島よりも魔鈴が凄いと理解しておりクラスメートに教えていく


「そうね…、普段は横島君の自由にさせてるけど、肝心なとこは押さえてる感じがするわ」

同じく加奈も横島には魔鈴の影響が強く、肝心なとこは魔鈴が押さえてると感じていた

彼女達の会話は横島と魔鈴の関係で盛り上がり、横島の評価が上がるたびに横島以上に魔鈴の評価が上がっていくのは言うまでもない

なまじ以前の横島を知るクラスメート達だからこそ、横島をここまで導いたであろう魔鈴への評価が特に高まっていたのだ


(元々モテる要素はあったのよね~ 明るくて楽しいし、顔もまあまあ。 あの欲望丸出しの感じさえ無ければって考えた子は少なくなかったはず……)

高校入学時から横島を知る加奈は、横島が自分で言うよりは嫌われて無かった事を知っている

ただ横島を好きな子が何故誰も声をかけれなかったかといえば、やはり横島の煩悩だった

別に煩悩が悪いとは言わないが、あまりにオープン過ぎるのは問題なのだ

デリケートな女子高生達なのだから、せめてもう少し本音と建前を使い分けれたら、横島も彼女が出来ていただろうと思う


(基本的に女の子に優しいし、嘘つけない性格もいいのよね~ ただ、魔鈴さんと張り合うのは無理だわ)

いろいろ考えていた加奈もまた、横島が嫌いではないらしい

ただ魔鈴を良く知るだけに、横島に近付こうとは思わないようだが…


愛子達がそんなガールズトークに華を咲かせている頃、料理の方は忙しい時間が終わろうとしていた

一番忙しい時間が過ぎた時、横島は誰に言われるでもなく手伝いを終えて愛子達の元に戻っている


必要以上に余計な手出しをしないのは、やはり横島がここの料理人で無いからであった

料理人が違えば細かな部分ではそれぞれ個性が出るものだし、部外者としては当然である



(久しぶりに楽しかったな…)

手伝いが終わって一息ついた横島は、目の前で真剣に料理を作る料理人達を少し懐かしそうに見つめていた

自分の手で食材が料理になり、客に喜んでもらう

そんな普通の日々が、横島は何より好きだった

過去に戻って来て以来GSとして働き、多くの霊症に苦しむ人々を救う日々も嫌いではないが、横島はレストランの方が好きなようだ


(全部終わったら、またみんなでレストランをやりたいな。 今度はルシオラも一緒に……)

横島はこの先に広がる無限の未来に夢を見つつ、また未来のような普通な日々を送りたいと願ってやまなかった


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