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香港編

その日の夜、魔鈴宅では魔鈴が忙しそうに香港行きの準備をしていた。

元々横島や魔鈴はあまり道具を使わないのでそれほど大きな荷物にはならないが、着替えや最低限の霊能アイテムは持っていく予定である。

一方そんな慌ただしい魔鈴宅の外では、横島が魔装術を纏った雪之丞と手合わせしていた。

横島と魔鈴は香港では勘九朗とメドーサと戦いになると事前に雪之丞には伝えており、雪之丞はマリアと一緒に勘九朗の相手をする可能性が高いことも伝えている。

そんな雪之丞が明日香港に向かう前に、もう一度横島と戦いたいと言い出したのだ。


「この短期間で本当に動きが良くなかったな」

「ちっ、まだ一撃も当たってねえじゃねえか!」

「俺が一番得意なのは避けることなんだよ。 それに俺とお前じゃ流石に経験が違う。 俺は未来でお前と散々やり合ったからな。 動きがよくわかるんだよ」

手合わせというか戦いは雪之丞が一方的に攻める中、横島は器用に避けてるだけである。

しかし雪之丞はGS試験の時よりも段違いに動きが良くなっていた。

GS試験の後、地道な除霊の合間に横島達を相手に散々手合わせをしていただけにその成果が出始めているのだ。


「ただ霊力値はあんまり上がらなかったな。 流石にお前の実力だと短期間で上がるのは難しいか」

動きが段違いに良くなった雪之丞だが、霊能力という点ではさほど上昇してない。

元々霊能者として人並み以上に修行して来た雪之丞は現状でもある程度のレベルには達しており、それ以上となると急激な伸びは簡単ではないのだ。

かつての横島のようにド素人ならともかく、現状でも人間としてはトップクラスの霊力を持つ雪之丞が更に霊力を上げるには相当ハードルが高いようである。


「俺よりお前はどうなんだ? 本当にメドーサに勝てるのか?」

「まともに勝とう考えるならまず無理だよ。 霊力も技術も経験も向こうが圧倒的に上だからな。 俺だと文珠を使わなきゃ殺されて終わりだよ」

手合わせをしながらも会話をする二人だが、雪之丞は自分のことよりも横島達の方を心配していた。

勘九朗はまだ雪之丞でも戦えるレベルだが、メドーサは格が違うのだ。

横島や魔鈴の強さは理解してる雪之丞だが、それでもメドーサと戦うのは危険だということに当然気付いている。


(切り札さえ使えれば勝てる可能性はあるってか)

横島は今回は文珠を使わずに済ませたいので不安げだが、雪之丞は切り札の文珠さえ使えればそれなりに戦えるのだと理解して驚きを隠せない様子だった。

文珠自体は何度か見せてもらったので知ってはいるが、正直あの能力は非常識だというのが雪之丞の感想である。


「文珠は便利だけど後々問題になるから、簡単に使っていい物じゃないんだよ。 だけど俺も対魔族戦は文珠抜きにしてはほとんど考えてなかったしな」

雪之丞が少し考え込むのを見た横島は、苦笑いを浮かべて文珠は簡単には使えないと言い切る。



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