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二年目の春・6

「石化魔法による回復不能者の保護か。」

「それは本当に裏の目的などないのですか?」

「ミスタースプリングフィールドは何故今更。 メルディアナの人間に任せておけばいいのでは?」

「メルディアナは最早独立組織として機能してない。 あそこはメガロ本国のゲートがあるのだ。 他と同じとはいかん。」

同じ頃魔法協会本部では最高幹部による定例の会議が行われていたが、近右衛門がネギの祖父からの要請文が届いたことを告げて受け入れの是非を検討したいと告げるも幹部の反応は芳しくない。

ネギ受け入れのゴタゴタからおよそ一年になるがあの件の後始末は未だに終えたとは言いがたく、特にあの時クルトが持ち出した戦時の指揮命令権の問題は麻帆良などの反メガロ派魔法協会が話し合いの席にヘラス帝国まで引っ張り出したことで相変わらず進展しない話し合いが続き泥沼化しつつある。

結果としてメガロメセンブリアもヘラス帝国も地球側の魔法協会も長い歴史で積み重ねてきた複雑な過去をほじくり返す結果となり、それぞれに不満や苛立ちを増幅させるだけの本当に意味のない会議として誰の得にもならなくなっていた。

現状で共通した意思は地球側国家の介入は絶対にさせないということであり、それだけはメガロメセンブリアとヘラス帝国に親メガロ反メガロ関わらず統一した意志となっている。

そんな状況がある中でまたネギの祖父からの要請に幹部達が歓迎するはずはなかった。

また良からぬことを企んでるのではと警戒するし、引退したのに何故今更メルディアナの問題を他所に押し付けるのかといった批判的な意見が多い。

無論人道的な見地から単純に受け入れの拒否をしては国際的なイメージが悪くなるとの懸念もあり、単純に拒否をするのもまた得策ではないとの意見もある。

近右衛門個人としては友人でもあるし孫を持つ祖父としての立場から悪い感情はすでに抱いてないものの、信用しろと幹部達に言って受け入れを近右衛門がごり押しするつもりはない。

一応土偶羅の調査でも得に裏の目的などないと判明したが、昨年に続いての行動には庇いきれないのが現状だった。


「他の出方を見ては?」

「そうだな。 それがいい。 何も我らが率先して判断する必要はない。」

その結果最終的にはこの日の幹部会では判断保留となり、他の魔法協会や魔法世界の国家などの反応を見て決めるという先送りとすることになる。

恐らく地球側ではジョンソンやヨーロッパの魔法協会は受け入れるし、魔法世界でもアリアドネーは受け入れるだろう。

ただ今日現在に至ってもどこも反応を示してないのは昨年のこともあり、どこもかしこも慎重になってるのは明らかだった。

どのみち治療が出来ぬ石化した人間は緊急性を要するにものではないので、そう結論を急ぐ必要がないのだから当面は様子見とすることが無難なようである。


「では次に今年の麻帆良祭についてですが……。」

加えて魔法協会では急遽一年早まった世界樹の魔力の大放出に対する対策で今は忙しい。

前回はメガロから派遣されてきた人員が主導して対応したが今回は自分達でせねばならなく、関西呪術協会にもこれを機会に協力要請を出して協力した実績を作るべきだとの意見が幹部達にはあった。

プライドが高い関西から協力要請が先に来ることはまずないので協力した実績を作るには関東から先に要請を出す必要があるが、二十二年に一度の世界樹の問題はそれにうってつけでもある。

まあ人員を選ばねば不要な対立が起きかねないが、そこは詠春に期待して少数でも友好的な人員のみを派遣して欲しいと言うのが関東側の理想だった。

木乃香が成人するまであと五年しかなく近右衛門の年齢を考えても魔法協会を統合するにはこの五年が勝負になる。

今のところ木乃香本人の意志も近右衛門や詠春の意思も明らかにはされてないが、本気で魔法協会の統合するには近右衛門が健在なうちに準備をして木乃香に継がせるのが一番可能性が高い。

むろん二十歳そこそこの木乃香に政治的な手腕を期待するのは無理で当面は近右衛門と詠春が実質的に収める体制となるだろうが。

それでも近右衛門があと十年健在ならば一応形にはなるだろうと関東の幹部達は見ていた。

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