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二年目の春・6

「ほえ~、これが非常食ですか?」

「さよさんは初めてでしたか。 意外にイケるですよ。」

翌日は麻帆良学園全体での防災訓練の日であった。

避難訓練は元より防災の授業なんかもありお昼には期限切れが近い防災食品の更新と勉強の為にと防災食品での昼食となるが、意外に美味しい食事に昨年まではなんとなく毎年見てるだけだったさよは驚いていた。

メニューはカレーライスや牛丼などの主食が一人一食と乾パンやチョコレートなんかの甘味系を数人分けて味見する程度であるが、期限がおよそ三年から五年となっているので麻帆良学園では生徒の教育を兼ねて年に一度食べさせてるらしい。

ちなみに製造は雪広などの支援企業の防災食品であり学園の支援をしてくれてる企業から優先的に納入されており、こういう学園との取引が支援企業の宣伝や利益となり支援企業確保の一翼を担っている。

まあ防災食品自体は数年前の阪神大震災の影響もあり近年はバリエーションが増えるなどあり、生徒達はちょっとしたキャンプ気分な者も多いが。


「防災食品ですか~。 家にも用意した方がいいんでしょうか?」

「一般的には数日分の非常食は用意した方がいいと言われてますが……。 ただ店には米などの水以外の保存可能な食材はさよさん達の分は十分にあるですよ。 」

3ーAの少女達に関してはいつものお昼のように親しい友人が集まり昼食となっていたが、話題が防災になると寮生活の少女達と違いさよは自宅にも非常食をとこの日授業で教わったため帰ったら横島にも話した方がいいかと素直に考えていた。

ただ横島に近い少女達は単純に異空間アジトにいつでも行き来出来る横島に非常食が必要なのかとの疑問があるし、夕映達は仮に非常食を用意するにしても米や小麦粉などの穀物や芋類に漬け物などが横島とさよ達が食べる分は十分にあることを知っていて万が一を考えて用意するにしても水くらいで十分だと告げる。

しかも麻帆良には淡水の麻帆良湖があるのでその気になれば飲める水は手に入りやすい。


「非常食? ああ、一応持ってるぞ。」

そしてこの日の放課後になるとさよは少し気になったのか厨房でこの日の夜にある美砂の誕生パーティの料理を作っている横島に非常食を尋ねると、持ってるという少し微妙なニュアンスの答えが帰ってきていた。


「ほれ。 特殊な魔法で封印した非常食だよ。 理論上は千年は持つはずだ。」

一緒に居た夕映とのどかがその言い方に少し疑問を持つが答えは次の瞬間にすぐに出ていて、横島の影から段ボールに入った大量の保存食が出てくる。


「いつ見ても四次元ポケットみたいですね。」

「本来は式神とか影に潜ませておく技なんだけど便利だから物置代わりにいろいろ入れてるんだよ。 一人なら一ヶ月分は持ってる。」

なんというかその光景はほんと四次元ポケットそのもので少女達が一番覚えたい魔法である瞬間移動の次に便利な魔法だなとのどかは感心していた。

非常食自体は例によって魔鈴とカオスの技術での魔法による封印の影響で魔法が劣化するだろう千年以上は持つと思われる優れた非常食であるが、異空間アジトには時間を凍結した特殊な空間の倉庫があり必要性がほとんどないため量産は見送られたもので試作品の余りであったりする。

尤も食品封印の魔法自体は後になり異空間アジトから元の世界の人間界への支援に使われるために改良されて十年ほど効果がある劣化版魔法として異空間アジトから送り出す食品の一部に使われたが。

魔鈴もカオスも研究者なのでとりあえず高性能や効果を高めることをするが、冷静に考えると食品保存に千年も耐えうる魔法を使うのは非効率以外の何物でもない。


「あの、千年も保存する必要があるのですか?」

「……ないな。 結構難しい魔法で効率も悪かったし向こうだとそこまで必要性もないから試作して終わった非常食だよ。 勿体ないから一応影の中に入れてたけど今の今まで忘れてたくらいだ。」

ちなみに夕映とのどかはすぐに非常食にそこまでする必要があるのかという疑問に気付き、それに気付かず魔法の開発までした横島と顔も知らぬかつての仲間に何とも言えない表情をする。

確かに技術は高めるべきだしトライ&エラーは基本中の基本だが、もう少し考えてから開発するべきではと至極まともな考えが浮かんでいた。
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