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二年目の春・6

その頃横島は二階のリビングでノートパソコンにて土偶羅からの報告を流し読みしていた。

近くではタマモとさよとハニワ兵達が賑やかに騒ぎながらテレビを見ており、横島はそちらも見ながら本当に流し読みというか軽く目を通すだけである。


尤も異空間アジト内の報告はほとんど報告の題名を見るだけで飛ばすが、そもそも報告の数が多くいちいち見てたらキリがないのだ。

土偶羅とハニワ兵で仲良くやってるなら口を挟む必要はないと横島本人は思っている。

ただ秘密結社完全なる世界の動向や魔法世界関連の諜報報告の方は自分達の安全に直結するので最低限ではあるが見ていた。

こちらに関しては横島という存在が居ることによる歴史の変化や土偶羅が麻帆良に協力してる影響で完全なる世界は史実や超鈴音の歴史よりだいぶ後手に回っているし、魔法世界においてはネギの修行先へのクルトによる介入の混乱が地味に今も影響していて状況は麻帆良にとって有利に動いていた。

とはいえ歴史の大まかな流れは大局的に見ると未だにさほど変わりなく例外は最上級神魔以上の存在である横島との絆が深まるにつれて明日菜を筆頭に麻帆良の歴史や運命が変わりつつあることだが、世界全体として見ると明日菜が幸せになり麻帆良が勝ち組になっても世界に対する影響は限定的であり、この流れを唯一把握している土偶羅も麻帆良と関西を含めた日本の魔法関係以外への影響は可能な限り少なくしている。

相変わらず責任が取れないまたは取りたくないところには関わらないのが横島と土偶羅の基本姿勢であり、ぶっちゃけるとキリがないだけとも言える。

そんな横島が現状で気になるのはやはり完全なる世界よりもクルト・ゲーデルの動向であった。

行動原理が他人の為であり信念もあるクルトは真相を知る横島からすると立派な男だと理解はするし、必要とあれば他人を平気で踏み台にする決断力も評価する。

流石は高畑と同じ英雄の系譜だと尊敬する部分もあるが、問題なのは横島とは利害が全く一致せずむしろ邪魔な存在とすら言えることか。


「やっぱ、高畑先生を失ったのが裏目に出たな。」

しかも盟友である高畑が横島が狙った訳ではないがクルトから距離を置き結果的に麻帆良側に軸足を移してしまった為にクルトは余計に追い詰められており、魔法世界にとっても地球側にとっても危険な存在になりつつある。

正直ここまで追い詰められる前に高畑がクルトとメガロメセンブリアの双方に冷静になるようにとでも働きかければ違ったのだろうが。

ただそれをしてもまた振り出しに戻るだけで魔法世界の混迷は何一つ進むわけではないことが厄介なところだった。


「無理だよなぁ。」

ここで横島は一瞬超鈴音は無理でもこのクルト・ゲーデルに魔法世界を救わせるように動けないかと考えるがすぐにその考えを捨ててしまう。

あまり深く考えるタイプではない横島から見てもクルトが外部からコントロール出来る人間でないことは明らかで、下手に関わると麻帆良や横島にまで毒が回るのは確実であろう。

かつて横島は幼い頃に母から言われた言葉をこの時何故か思い出していた。

それは生き物を飼うなら最後まで責任を持ちなさいと厳しく言われたとのことだが、魔法世界の問題も同じかもしれないとふと思ってしまう。

いろいろ考えはする横島だが結局は現状維持が一番無難なのだと改めて理解し軽くため息をこぼしていた。
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