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あの素晴らしい日々をもう一度

そして横島と陰念の試合が終盤に差し掛かった頃、メドーサはようやく試験会場に姿を現していた。


「妙だね」

この場に到着するまでは自身の関与の尻尾を掴もうと躍起になる小竜姫がどんな顔で戻って来るかを楽しみにしていたメドーサだが、試験会場に差し掛かると多くの霊能者の緊張感を感じている。

最初メドーサはそれを試験に関わる人間の緊張感かと思ったが、どうやらそれ以外にもいるようでまるで自分が見られてるような感覚な気がした。


「まあいい。 どのみち会場では小竜姫は何も出来ないはずだ」

何か少し嫌な予感を感じるメドーサだったが、せっかく用意した舞台を楽しむことを優先して試合会場に入っていく。

しかし会場に入ったメドーサは落ち着いた様子で一人試験を見守る小竜姫を見つけて、すぐに驚きの表情に変わることになる。


(ちっ、もう先に来ていたか)

今回メドーサはあえて小竜姫に対し、わざと自分が関与してるという情報が流れるように細工をして少々遊んでいた。

メドーサはGS協会を混乱させるように命令を受けていたが、詳しい指示がなかったのでついでに小竜姫で遊ぼうとしただけである。

堅物で融通の利かない小竜姫ならば自分の計画に翻弄されてぶざまな姿を晒してくれるだろうと考えた程度で、計画のついでの余興でしかない。

そもそも本気でGS協会に潜り込むならば、すでに免許持ちのGSを捕まえた方が早かった。

家族の一人でも人質に取れば大抵の人間は逆らえなくなるし、金を積んで靡く連中も少なくはないのだ。

要はGS協会に揺さぶりをかけて疑心暗鬼になるだけで仕事は完了と言ってもいい。

そんなメドーサにとって自分を探すこともしなければ関与した証拠を探す訳でもない小竜姫は、少々予想外でありはっきりいえば面白くない。


「遅かったですね。 メドーサ」

しかし少々予想は狂っても全体としてはまだ自分のペースだと判断したメドーサは小竜姫に再び揺さぶりをかける為に気配を消して背後から近づくが、残り三メートルほどまで近付いた時に振り返りもしない小竜姫から突然声をかけられてしまう。


「相変わらず何とかの一つ覚えみたいに、無駄な修行だけは積んでるみたいだね」

「無駄かどうかは貴女には関係ありませんよ。 貴女こそ世界に不満があるのならば、コソコソと弱い者イジメをしてないで神界にでも攻め込めばいいではありませんか。 まあ出来ませんよね。 貴女もどうせどこぞの上級魔族の使い魔でしょうから」

一方の小竜姫はメドーサが会場近くに来た時からすでに気付いており、心の準備を終えて待ち構えていた。

かつての歴史では小竜姫は最後までメドーサに翻弄されてしまい、結局は横島に倒されるまでろくに反撃も出来なかった。

そんな苦い思い出が鮮明に蘇ってくる。

しかし横島を守る為には今回こそはメドーサに翻弄される訳にはいかないのだ。

結果全神経を集中していつでも反撃出来る準備をしつつメドーサを挑発する小竜姫だが、メドーサは自身の挑発に挑発で返されたことに軽く舌打ちしただけで堂々と小竜姫の隣に座ってしまう。



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