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卒業の意味

時が少し遡って朝日が街を照らし始める頃、おキヌはすでに起きていた


全く寝れない訳では無いが、熟睡も出来ない

あれから数日はそんな中途半端な日々が続いている


「今日は卒業式ですね…」

窓から朝の街を眺めながらつぶやくおキヌ

都内のほとんどの高校が今日卒業式であり、横島の高校や六道女学院も同じである


「横島さん、卒業おめでとうございます」

届かないと…

聞こえるはずが無いとわかっているが、おキヌは一言その言葉を伝えたかった


(何故こんなことになったんでしょうね…)

多くを望んだつもりは無いのに、側に居て祝福の言葉を伝えることも出来ない

おキヌは横島の気持ちや考えを何も知らない自分が、本当に嫌になる気がした


(横島さん… なんで… 何も話してくれなかったの?)

ただ、おキヌは横島の気持ちを知ろうともしなかった自分と同じくらいに

何も話そうとしなかった横島に対しても、モヤモヤした気持ちを抱えている


「やっぱりルシオラさんの件からすれ違ったのかな…」

いくら考えても理由がわからない

ただ、理由を考えると浮かんでくるのは、ルシオラを失った時の横島の魂からの悲鳴であった


「でも、なんで魔鈴さんなの… タマモちゃんとシロちゃんなの…」

何故令子と自分が置いていかれたのか

そして、何故選ばれたのが魔鈴やタマモやシロなのか


結局、おキヌの思考は迷走から抜け出せない

まるで別世界のように静まり返った事務所を見ると、おキヌは寂しさだけが募ってゆく


(そろそろ朝食の準備しなくちゃね…)

考えを止めて、おキヌは朝食を作りにキッチンに向かう


ここ数日、令子が早く起きてくるのだ

朝食を作ろうとまではしないが、おキヌと一緒に朝食を食べれる時間には起きてくる

あえて口にしないが、それが令子の優しさだとおキヌは理解していた



そして時は、令子が洗面所から出たとこに戻る


「おはよう、おキヌちゃん」

「美神さん、おはようございます」

互いにいつもの笑顔で挨拶を交わす二人は、一緒に朝食を食べはじめる


「今日の卒業式、私も顔出すわ。 六道のおばさまに挨拶頼まれてるの。 向こうに行ったら、多分話すこと出来ないと思うわ。 ごめんね」

令子は朝食を食べながら今日の予定を話す

その表情はあまり冴えず、令子自身は行きたくないようだ

しかし普段の仕事とは違い、今日はだけ行きたくないからと言ってキャンセル出来ない

オカルト業界のエリート中のエリートである、六道女学院の出身者として現在もっとも活躍しているのが令子である


六道女学院の卒業式には業界関係者は元より、GS協会理事長やオカルトGメンの責任者である美智恵まで一同に集まる

オカルト業界の六道家の権力の象徴とも言える行事なのだ

そんな重要な行事で、アシュタロス戦の英雄となっている令子が欠席する訳にはいかない


「私は気にしないでいいですよ。 美神さんこそ大変でしょうけど頑張って下さい」

令子を気遣い笑顔を見せるおキヌ

一年前の卒業式で令子がどれだけ注目を集めて大変かを、良く理解している


その後、おキヌは朝食が終わると学校に登校して、令子は卒業式に行く準備を始める

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